第266話: 偽神vs鬼神

辺り一帯にガラスが割れるような甲高い音が鳴り響いた。


エドの放った神速の一太刀を阻んだのは、一定の物理ダメージを肩代わりしてくれる《神の身代り》だった。


神格化した海斗は、効果が失われる度に《神の身代り》を発動していた。


斬撃と防御の応酬。


「やるね、ならばこれならどうだい」


《居合・覇獄斬》


数多の不可視の斬撃が海斗目掛けて放たれる。

斬撃の余波で大地が抉れる。



《天刑・天邪鬼》


触れただけで全てを溶かしてしまう死の雨がエドへと降り注ぐ。

エドは怯む事なく、攻撃を確かめるように両手を広げていた。



その後、二人の戦闘によりこの星自体が震えているかの如く、巨大地震が起こり、地形を変形させながらも両者の戦いは数時間に渡り繰り広げられた。

地殻を刺激され、マグマが溢れ出す。

しかし、2人は何ら気にする様子はなく、マグマ降り注ぐ中も闘いは続けられた。


神とて神力は無限ではない。

最初の頃に比べると徐々にその攻撃の威力は下がっていた。


《天刑・審判》


天から巨大な十字架が降り注ぐ。

十字架はエドを囲み一周するように地面に突き刺さると、やがて囲まれたエリアが眩いばかりに輝きだした。

まるで、天から光の光線が放たれているかのように。

エドは咄嗟に腕をクロスし、致命傷とならぬ様に自身の頭をガードする。

轟音と地響きで三度大地が悲鳴をあげる。

粉塵を巻き起こしながらも、やがて光が晴れると、エドとその真下の大地以外が完全に消滅していた。

穴は地の底まで繋がっているのではないかと思える程に底は薄暗く見えなかった。

エドも鎧の両腕の部分が無くし、素肌を晒していた。


「いい攻撃だ」


即死以外の傷ならば即座に再生してしまう海斗に対し、圧倒的な防御力で無傷を貫いてきたエド。

拮抗していた戦いの中で、今まで数多の攻撃を防いできたエドの全身甲冑が度重なる超級ダメージの蓄積により、次第にヒビが入り、やがて砕かれた。


鎧の下から出て来たのは、褐色の肌に鍛え抜かれた肉体。金髪のキレイな長髪が風でなびく。


「まさかおいらの鎧が砕かれるとは…楽しかったけど、仕方ないな」


エドはその力を開放する。


膨大すぎるその力に大地が再び恐怖し、震え上がる。


耐えきれなくなった地表が、足元に巨大な地割れが発生させる。


その規模は死霊大陸が2分される程に…


エドの纏っていた鎧はあらゆる魔術を無効にし、反射してしまう性能とは別にもう一つの役割を持っていた。

それは、自身の力を制御する役割を担っていた。

鎧が破壊された事で抑制されていた力が開放される。


《極居合・白乱舞》


まるで白鳥が舞い踊るかのような斬撃なのだと本人は語るが、常人にその太刀筋を見る事は到底出来ない。

故に抜刀の姿勢から何ら変わる事なく放たれた神速の剣技に神格化した海斗ですらも反応出来ず、一瞬で跡形もなく消え去った。

神に近い存在となりその力をもってしても尚、エドには到底届かなかった。


ユウと同じく、この世界の神と呼ばれる存在から異世界転移させられた男の一生がここに終わった…


「おいらを通常・・・モードにさせただけでも大したもんだよ。少しだけ楽しめたかな」


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(7大魔王が一人技巧のセルバ編)


シア大陸のとある郊外


「・・・・ついに完成したな」


本当に準備だけで2年という歳月を費やしてしまったな。


セルバの眼前には、1000を超える機械の軍勢が並んでいた。

その光景はまさにロボット大戦と呼んでも差し支えない程に。


「予定外だったのは、異空を渡る際に携帯していた魔導兵が全部使い物にならなくなっていたことだ。まさか、異空間転移に耐えられないとは思ってなかったからね。結局一から魔導兵を作る羽目になってしまった。だが、こちらの世界の技術を取り入れ改良し前より性能は上がっている。結果的には怪我の功名だな」


これだけの戦力があればこちらの世界でも通用するだろう。


さて、当初の予定通り、まず戦火の狼煙として手始めにあそこに見えるバーン帝国なる大国を攻め滅ぼしてみるか。

外部からの侵入を阻害すり強固な要塞造りの外壁。

この世界の戦力を測るに丁度いいだろう。


こちらの戦力は約1000体の魔導兵器。

簡単に打ち滅ぼしてしまってはつまらない。精々足掻いて欲しいものだね。


《視覚遮断フィルター解除》



セルバが唱えると、ここら一帯を覆っていたドーム型の膜が消え去った。


「さて、進軍開始だ」

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