第211話: ユリシアの秘策
7大魔王の一人、ユリシア編
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私の名前は、ユリシア・アーガノイド。
自分で言うのもなんだけど、攻撃したりするのは凄く苦手。その代わりに、私には多種多様な非攻撃系の魔術を得意としてる。相手を惑わす幻惑や幻影は勿論のこと、洗脳なんてのも凄く得意。
そんな私についた二つ名は、魔性のユリシア。
正直この呼ばれ方はあまり好きじゃないんだけど、別に興味もないから文句は言わない。
私はこの力を使って過去幾つもの国を手中に収めてきた。ある国では、魅了し洗脳した国王を私の思い通りに使い、国の全権を手に入れた。
別の国では、国全体を覆う程の幻影空間を創り出し、国民全員を自殺に追いやった事もあったわ。
そんな事をしている間に、いつの間にか7大魔王と呼ばれる一人となっていた。
世界を混沌に陥れた最悪最凶の7人。
ある時、この世界の寿命が尽きる前に、私たちは異世界へと渡った。
「それぞれがどれだけの領土を我が物に出来るか、勝負といこうか。本格的に動くのは1年後だ。それまでは各々水面下で、征服に向けての下準備を整えておけ」
サブリーダーのラーちゃんのこの言葉を皮切りに、メンバーが行動を開始した。
実際に表立って行動を開始する為の準備期間は1年。それは、私のような非戦闘員を気遣って設けられたいわば、下準備の期間。圧倒的な武力で征圧出来る人からすれば、この1年というのは退屈極まりないと思う。
取り敢えず私は、この世界を巡ってみようと思う。そうして訪れた場所には、従順な部下を作っておく事を忘れない。
そんなこんなであっという間に歳月が経過してしまった。
色々あった。本当に色々あったかな。この世界の事もだいぶ理解出来たと思う。たぶん。正体を偽って、この世界に暮らしている人と接してきたけど、親切な人が多かったイメージかな。
お腹を空かせていたら食料を恵んでくれたし、道に迷っていたら馬車で目的地まで送ってくれた。
うん、決めた。
やっぱり
来た当初から思ってた事がある。この世界、綺麗過ぎるんだよね。私が元いた世界は、ここなんかよりずっと、黒くて、淀んでて、ジメジメしてて、とにかく暗い暗い所だった。こんな綺麗で明るい世界は私が壊してあげるよ。何か不公平だしね。理不尽極まりない。
さて、1年の期日までまだ数日あるけど、一足先に行動しよっかな。先手必勝ってね。
バレなければいいよね。
そんでまず私が目をつけたのは、エルフと呼ばれる長寿種。他種族とは一線を引いて生活を送っている。
正直、エルフ族の住処を見つけるのは容易ではなかった。だけど、私の力を持ってすれば、この世界のほぼ全てのエルフ族、その類似種であるダークエルフ族の生活拠点を見つける事が出来た。
この世界に数多いる種族の中で、魔族に次いで強固な力を持った種族が、エルフ種だと突き止めた。
私ってば天才かも?
私の能力による強化が前提だけどね。
強化とは、洗脳と
本当は魔族の方が良い効果を発揮するみたいだけど、私は魔族からは手を引いた。
だって、私より先に魔族に唾をつけてる7大魔王がいたんだもん。残念だけど、あの人がいたんじゃ、私に勝ち目はないからね。次点のエルフ種で我慢したってわけ。
ふふふ、楽しみね⋯⋯エルフ種を使った世界侵略。必ずや、私が一番の成果を上げてみせる。そして、彼の方に認めて貰う。
まずは、私が見つけたエルフ種の全ての拠点に既に配置している駒を起動する。
《
本来対象者が持っている潜在能力を一時的に極限まで引き出す事が可能。対象者が洗脳状態となっている必要がある。
《
最初に取り決めを行い、次にその取り決めを行なった際に、一度唾をつけた相手を時間差で洗脳状態にする事が可能。
《
離れた場所において、
私の
しかも、この魔術の素晴らしさは洗脳者本人が洗脳されてる事を察知出来ない点にある。
気が付いたら洗脳されてるんだもん、全くお気の毒よね。
これに加えて、洗脳よりは少し劣るけど、
実の所、常時洗脳可における人数は決まっている。その人数以上は、私の魔力がもたないの。
トリアちゃんに魔力を多大に補給出来る
だから、
なので
ま、その辺りも含めて既に大凡の目星はつけてる。私は見る目はある方だと思ってる。悪い奴なんて眼を見ただけで分かるもの。
なんてね、本当は見分ける眼を持っているだけ。
さてさて、やってきたのは小さなエルフの国。確か名前はプラメルって言ったかな。
この国は平和ボケしていて、悪しき心を持った者が、どうやら唯の一人もいないみたい。信じられないけど私の眼で確認したから間違いない。
うーん、面倒だけど洗脳を使うしかないかな。
あと、なんだっけ?
ここへ来る道中、国の外だったけど、私の眼にドス黒いオーラを放った変な奴がいたね。
なんでも元この村出身で、悪い事したから追放されたとか。御愁傷様。でも喜んで! あなたに仕返しするチャンスをあげるから。
精々踊ってくださいな。
「あくまでも目的はエルフの里プラメルの制圧ね。逆らう者は殺して構わないわ。王様御一行は、牢にでも閉じ込めておいて。後で使うから」
「何か目的を遂行する為に戦力をお貸し願えないか?」
戦力?
うーん、困ったなぁ。私ってば非戦闘員でか弱いからね。
あ、そうだ、そんなキミにこれを上げよう!
7大魔王が一人。セルバちゃんに貰った怪しげな卵をあげるよ。何が出るかは知らないけどね。
あんまり期待はしてないけど、脚さえ引っ張らなければいいよ。どうせ、本命は私の洗脳した者たちがいるんだし。
さて、私は次の場所へと急ごう。
執行の日までに、後8箇所回らなければならない。
あー忙しい忙しい。
でもこの勝負に勝つ為には、もっともっと頑張らないとね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます