第61話: デートの約束
ガゼッタ王国のダンジョンに挑戦していた。
決して余裕があった訳ではないが、やっとの思いで49階層まで辿り着いた。
しかし、そこで待っていたのは、俗に言うダンジョンボスと呼ばれる強い個体だった。
俺が後方に下がり、司令塔役に徹する。
右側には、ユイとリンのコンビで、左側には、クロとジラのコンビだ。
戦闘開始だ。
バリアントが俺たちに気が付くと、凄まじい雄叫びを上げる。
すると、何処から沸いたのか、体長1m弱の子マンモスがゾロゾロと沸いて出て来た。
想定外だったが、処理範囲内だ。
レベルも40程度だったので、俺の魔術で一掃する。
しかし、次から次へとそれこそ無限に沸き出て来る。
両側面から同時攻撃で、バリアントに斬り込む。
流石に高レベルなのと、その巨体ゆえ、あまりダメージは通っていないようだ。
時折、前脚を上げて、地割れ&
その攻撃の巻き添えを喰らい、子マンモスが全滅している。
同士討ちもいいところだ。
ジリ貧が続く最中、バリアントが一瞬怯んだのを見逃さなかった。
「一気に畳み掛けるぞ!みんな!最大スキルで攻撃だ!」
「了解!」
高火力のスキル、魔術がバリアントに次々と命中していく。
俺も最大魔力のエレメンタルボムで交戦する。
着弾の衝撃波が皆を襲う。
あれ、こんなに威力があっただろうか?
そういえば、
今の一撃だけで、バリアントのHPの3分の1を削っていた。
「やはり、ユウ様は凄いですね⋯」
土煙が舞う中、ジラのそんな言葉が聞こえてきた。
バリアントの戦法がここへ来て変わる。
執拗に俺にだけレーザーアイを放ってきやがる。
確かに近距離相手には使用は出来ないので、離れている俺に対してのみ有効なのだろうが、さっきの一撃が余程頭にきたのか?
即座に反応して、ユイとクロがバリアントの両目を潰す。
その後も4人の猛攻が続き、やがてバリアントは動かなくなった。
「終わりましたね」
「お疲れ様です」
「おつかれさま〜」
「お疲れ」
最初は、どうなるかと思ったが、やはり皆の強さが圧倒的な戦いだった。
というか、一発も攻撃に当たっていないんじゃないだろうか。
俺がいなくても、大丈夫だったかもしれない。
倒したモンスターは、取り敢えずストレージの中に入れておく。
その様を見たジラが驚いていた。
そういえば、ストレージの説明をしていなかった気もするので、ついでに説明しておいた。
ユイが例の如く、宝箱を発見した。
中身を確認すると、どうやら魔術書の類らしい。
名前:テレキネシス
説明:視界に入っている対象一人に対して、心話を使用する事が可能。
ふむ。なかなか便利じゃないか。
早速覚えて使ってみる事にする。
俺は、ユイに心話を使用した。
(ユイ、聞こえるか?)
「!?」
(あれ、聞こえないか?)
「頭の中でお兄ちゃんの声が聞こえたよ!」
どうやら成功のようだ。
しかし、対象が視界に入っている必要があるので、結局の所、近場の人だけという事になる。やはり、微妙か。
いや、待てよ。遠視で見たのも一応視界に入っているならば、その効果範囲は絶大だ。
後で実験してみよう。
しかし、こちらからの一方方向なので、使う場所は、やはり限られるな。
49層は、やはりボス以外には何も見当たらなかった為、50階層へと降りてきた。
50階には、あからさまに宝箱が一つだけあった。
名前:リザルトダンジョン最深部到達者の証
説明:世界に点在する24個のダンジョンの内の一つリザルトダンジョンの最深部に到達した者に贈られる証。全24種集めると何かが起こる。
特殊効果:破壊不可
取り敢えず、目的は達成だな。
その後、2日掛けて俺達は地上へと戻って来た。
「ダンジョンって中々楽しかったですね。余り普段から戦闘する機会が無かったので、いい運動になりました。やはり、身体を動かすのは良いですね」
「それは、良かった⋯」
どうやらジラも体育会系らしい。
「マスター」
「俺の事か?」
「はい、変でしょうか?」
「いや、まあ、何でもいいけど」
「ご主人様では、リン様と被ってしまいますので、私は、マスターとお呼びしようかと思いまして」
また、新しい呼び名か⋯
呼ばれていて悪い気はしないんだが、なんというか、むず痒い。
「普通にユウでいいよ」
ジラが跪いた。
え、何?
「いえ、今回のダンジョン遠征で改めて再認識しました。マスターはやはり仕えるに足る人物であると。マスターのその強さに感服致しました」
「いや、謙遜している訳ではないけど、まともにやりあったら、俺はジラどころか、ユイやクロにも勝てる気はしないけどね」
「はい、謙遜です。ダンジョンでの最終戦を拝見させて頂き、マスターの強さがひしひしと伝わってきました」
その後何度か食い下がったが、結局ジラからはマスターと呼ばれる事になってしまった。
もう何でもいいです。好きに呼んで⋯
今回のダンジョン探求で、皆ジラとも仲良くなっただろう。
最初、ジラが仲間になると決まった時は、どうなるかと思っていたが、結果的にはこれで良かったのかもな。
ダンジョンから戻ってきたその日の夜に、俺はエレナの元を訪れていた。
エレナと会うのは、イケメンエルフとのイザコザ以来だった。
「あの後、大変だったんですよ。ユウ様の事は、喋れないし、丸く収めるのに苦労したんですから!」
「えっと、ご、ごめん⋯」
「なんでユウ様が謝るんですか」
エレナは、笑っている。
取り敢えず、気になっていたので、無事に解決したようで、良かった。
その後、新たに仲間になったジラの話をした所で、またエレナに睨まれてしまった。
「ユウ様は、綺麗な女性の方につくづく縁があるようですね?」
いや、たまたまなんです信じて下さい⋯
それに綺麗かどうかは話だけだと分からないと思うんだけど⋯
何故だか、この件を穴埋めする為、1日エレナとデートする事になってしまった。
「という訳で、エルフ族のエレナだ、皆よろしく」
「初めまして、リンさん、ジラさん、エレナと言います、どうぞ宜しくお願いしますね」
エレナの元を訪れた次の日、俺はエレナを連れて、ガゼッタ王国に戻って来ていた」
「本当に話に聞いていたように、お綺麗な方ばかりですね、ね、ユウ様?」
「あ、ああ⋯」
ジラがクロにコソコソと小声で何かを尋ねている。
「クロ、マスターを手玉に取っているあの方は、一体何者ですか?。私の見立てでは、相当に強者だと推測します」
「エレナは、ただのエレナ。戦わないし、ユウと仲良し」
コソコソしたって、バッチリ聞こえているからね、ジラ。
という訳で、本日の俺はエレナの貸切らしいので、皆には悪いが、別行動を取る事となった。
「ユイ、何かあれば、連絡してくれ」
「うーん、まぁ、今日くらいは許してあげる!」
その後、エレナと一緒に外をブラブラする。
「久し振りですね、ユウ様とこうして一緒に歩くのも」
「エレナ、いくらなんでも、その、ちょっと近くないか?」
エレナは、俺の右手をガッチリ掴んでいる。
そう、まるでそれは恋人のように。
「たまになんですから、バチは当たらないと思いますよ」
駄目だ、エレナの笑顔が眩しすぎて、もう何も言えない。
「よっ、そこのお二人さん。良かったらうちの店を見ていかないかい?恋が叶う石とかも置いてるぜ」
な、なんでこのタイミングで、呼び止められるんだ。
いや、寧ろこのタイミングだからか?
「少し見ていきましょうか?」
はい!分かりました!
とまぁ、こんな感じで終始エレナのペースで、デートが進行していく。
出店で買い食いをしたり、アクセサリー屋で可愛い花飾りのヘアピンをプレゼントしたりと、まるで本当にデートをしている感じだ。まぁ、デートなんだけど。
俺がディナーに選んだ場所は、以前から目を付けていた場所なのだが、一言でいうならば、展望レストランだ。
この王国が広く見渡せる名所でもある。
ユイ達と機会があったら訪れるつもりだったが、まさかエレナと最初に来るとは思わなかった。
「ここ絶景ですね〜」
どうやら気に入って貰えたようだ。
出てくる料理も値段はお手頃なのだが、どれも美味しかった。
是非、また来ようと思う。
「とっても美味しかったです、ここの料理」
「喜んで貰えて良かった。うん、確かに絶品だったな」
その後、俺の空気の違いをエレナが感じ取ったのか、少しだけ、無言の時間が流れる。
「エレナ」
「はい?」
「えっと、プレゼントがあるんだけど、受け取ってくれるかな」
「既にたくさん頂いていますが、はい、喜んで」
懐から、指輪を取り出した。
それを見たエレナが驚いていた。
「これは、遠距離連絡が取り合える魔導具なんだ。テレコンイヤリングの指輪バージョンかな。偶然魔導具屋で見つけたから、エレナに渡しておこうと思ってね」
何故だか、エレナの頬が赤くなっている。
「エレナ?」
「あ、はい、えーっと、ありがとうございます。これでいつでも何処でもユウ様とお話出来ますね」
エレナとのデートも無事に終わりを迎えた。
俺は、エレナをエルフの里まで送り届けていた。
「本当に今日はありがとうございました。急に無理なお願いしてしまってごめんなさい」
「ううん、俺の方こそ、久しぶりにエレナと色々話せて、気分転換にもなったよ、ありがとう。じゃ、戻るね」
「あ、ユウ様⋯」
エレナが何か言いたげだった。
「ん?」
「また、デートしましょうね」
「おう」
俺は、皆の場所へと戻った。
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