栄誉と富をシーソーに乗せて

ぽるぬるぽ

第1話 -喧騒と幻想と背徳の坩堝-

281 自分:この名無のエルフ

(ガキどもは寝たころか)俺はそう思いながらカウンターに座った。

「マスター、いつもの」


『ガヤガヤ×2』


286 返信:この名無しのマスター

「待たせたな。いつものやつ――緑茶だ」


『ガヤガヤ×8』


303 自分:この名無しのエルフ

緑茶、そう深夜のこの時間は人が少ない。俺はそれを一息に飲んだ。

俺はエルフに転生したが…体は少女でまるで弱く、冒険者家業などは無理だったのだ。

「ほら、これに頼む」

マスターが口の広い容器をカウンターに置いた。少し惨めな気持ちになったが、これも生きる為。

――チョロチョロ…


『ガヤガヤ』


305 返信:この名無しの客

「自分、直のみいいっすか?」


『ガヤ×19』


325 自分:この名無しのエルフ

客の一人がそう声を掛けてきた。

「ボウズ、仕入れ先を取るのはご法度だ」

マスターがそう言い、俺が"卸した"直後のその黄金色の液体をグラスに注ぐ

「本人の隣で飲むのが最高にクールなんだよ」

マスターが変態おやじの様にニヤっと笑いながら言った。俺は顔が真っ赤になった。


『ガヤガヤガヤ』


328 返信:この名無しの客

「いい趣味してるな、握手しよ」


『ガヤ×23』


352 自分:この名無しのエルフ

客とマスターが旧来からの友の様に仲良くなった。

俺の方を見ながら、俺の屈辱で真っ赤に濡れた顔を肴に"それ"をあおる。

「マスター、勘定をしてくれ」

もう無理だった。俺は嫌に高い報酬を受け取って足早に酒場を後にした。

この金は俺のプライドと引き換えに手に入れたものだ。決して安くない。

「ウエイトレスのバイトでも探そうかな…」

安宿の玄関が俺を出迎えた。

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