第17話「旅の理由」
ミヤは明るい調子で言った。
「ねえ、ルリアのことも教えてよ。なんで旅してるの? どうして私んとこの町へ?」
その問いにルリアは少し沈黙した。
目を閉じ、軽く頷いて、小さく口を開いた。
「私、昔の記憶がないんです……」
「記憶が……ない?」
「はい。ここ二年より前の記憶がきれいさっぱりなくて、それで自分が過去どう育ったのかとか、両親がいるのかどうかとか、どうやったら記憶を取り戻せるのかとか……、全部分からなくて……。その手掛かりを探して、こうして旅をしていたんです」
「そう……だったんだ」
ルリアは続ける。
「もしかしたら私のことを大事に思ってくれて、私のことを必死で探してくれている人がいるかもしれない。もしかしたらいないかもしれないけど、それでも私のことをそう思ってくれている人がこの世界にいたらいいなって……。だから、それを確かめたいのかもしれない。すみません、とりとめのないこと言って」
そう言うと、照れ隠しの中途半端な笑み。
「まぁルリアはもともとしっかりした親御さんいそうだけどね、育ち悪い感じしないし。なんか野性的なとこあるけど」
「野生……」
「それで手掛かりは?」
「……いろいろ歩き回ってはいるんだけど、まだ何も……」
「そっかぁ……」
「はい」
「あ、調べ物といったらニューラ市には行った?」
「え、いえ……。聞いたことしか……。たしか結構栄えてるところですよね。私、人が多いところだとどうしても疑われないか不安で……」
「まぁその黒いローブじゃね……。そんなの着てる人いないし、自分で魔女って言ってるようなもんだよ。てか、私と会ったときは別の服着てたじゃない。あれ着れば?」
「やっぱりそうですね」
「そんでね! 話戻すけどニューラ市には大きな図書館があるの。ものすぅーっごい数の本が収納されてて、それで専門書も山ほど」
「そっか、そこに行けばもしかしたら……」
「うん、手掛かりがあるかもしれないよ。魔女の記録があるかは分からないけど……」
ルリアの目は輝いていた。
「ありがとうございます! 私行ってみることにします!」
「それと……さぁ」
急に言葉を選び出すミヤ。
「?」
「もしここを脱走できたらさ、……一度うちの店に来てくれないかな」
「はい……。あ、そうですよね! 雑貨! まだ直してないのあったんですよね」
「ううん、そうじゃなくて……」
「え?」
ミヤは少し間隔を開けてから言った。
「お給料! 渡したいから!」
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