第6話「穏やかな朝」
青空の下、風が優しく木の葉を揺らす。
小鳥のさえずり、遠くからはニワトリの鳴き声。
そんな穏やかな朝の草原。その隅の草むらで、ルリアはうつぶせでぶっ倒れていた。
そこに近寄る一人の影。
それは六歳の小さな少年だった。
「なんだこれ」
しゃがんで、横に落ちていた枝でルリアの背中をつつく。
つんつん。
反応なし。
すると、また後ろから人影。
それは、少年に飛びかかった。
* * *
少年は足をばたつかせて悲鳴を上げる。
「いてーよ、いてーよ」
乱暴に少年を担いだのは少年より年が五つ上の少女。
「朝飯だからすぐに戻ってきなさい。姉ちゃんだって忙しいんだからね」
「だって、これが……」
「これ?」
少年の指し示す先には草むらに半分埋もれたルリアの姿があった。
「うお!!」
* * *
ルリアが目を覚ますと、そこは見知らぬベッドの上だった。
「え、何!? どこ!? ここ!」
首をきょろきょろ。
慌ててベッドから出て、扉を開ける。
外から鍵が閉められていないことに安心しつつも、部屋を出てすぐにあった階段を駆け下りる。
すると、そこでは朝食を取る姉弟の姿があった。
テーブルにはトーストと目玉焼き、そしてカボチャスープ。
「あ」とトーストを加えた弟。
「……!?」目が合ったまま制止するルリア。
* * *
「なるほど。倒れてた私を運んでくれたんですか。ありがとうございます」
テーブルで事情を聞き感謝。
「私はミヤって言う名前だからそう呼んで。で、この生意気なチビがレイって名前」
「私は、ルリアって言います」
「じゃあ、ルリアって呼ぶね。ルリアはなんであんなところで倒れてたの?」
「それが、旅みたいなことをしてて、その途中で……」
ルリアの腹がぐぅぅぅぅ~っと勢いよく鳴る。
「…………あ、空腹で」察するミヤ。
「……」恥ずかしくてうつむくルリア。
「朝ご飯、ルリアも食べてく?」
「そんな、悪いですが……。良ければ……」
「良いよ」
ミヤはにっこりと笑った。
* * *
ルリアは完食し、スプーンを静かに皿の上に置く。
(やっぱ魔法でムリヤリ作る食事より全然おいしいな……)「ごちそうさまでした」
悦に浸るほどの満足感を顔に浮かべるルリアに、安心した表情を浮かべるミヤ。
「今日は疲れてるでしょう。この家でゆっくりしていくといいわ」
「いえ、そんな! ご飯までごちそうさせてもらったんで、何かお手伝いします! させてください!!」
「え、大丈夫? さっきまでぶっ倒れてたんだよ?」
「お腹はふくれたので大丈夫です! 今日一日は何でもします!」
「そ、そう。じゃあ、これから近くにあるうちのお店に行くんだけど、一緒に来る? まぁ私もそのが安心だし……。あ、もう行く時間だけど、今から大丈夫!?」
「はい!」
* * *
入り組んだ町の路地。
早足のミヤに少し遅れを取りながら進むルリア。
商店街に入り、ミヤは周りで開店の準備をしている人々に「おはようございます!」と笑顔で挨拶をしている。
だが、ルリアには気になることがあった。
挨拶をされたみんながみんな、引きつった笑みを浮かべて軽くお辞儀をするだけ。
(あれ……?)
それをルリアは奇妙に思いながら後ろを歩いていると、斜め後方からひそひそ話が聞こえた。
「ミヤちゃん……、いつまであの店続けるんだろうな……」
「しっ、聞こえるぞ……」
ルリアは混乱した。
(どういうこと!? 私はこれからいったいどんな店で働くの!?)
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