第28話 交錯

「怪獣が出たぞ!みんな避難するんだ!」


そんな怒号が交わされる。新しくUB対策に設定された避難所へ人々はあせあせと逃げ始める。避難所までは少し距離がある。


俺は婦人2人のところへ戻ろうとしているところであったが、諦める事にした。だからと言って避難所へ行くわけではない。


俺はUBを写真に収める為にもUBへと近寄る。パニックになる人々に逆行していく。


あのUBは前に取り逃がしたやつ・・・・、頭の先に角があるが

大きく前に取り逃がしたUBとは違いがあった。


「翼がついている・・・・」


肩に装備された大きな翼。前に取り逃がしたUBのものだろうか。それよりも前に取り逃がしていた、火の玉を放ち、滑空していたUBの翼がそのままついているように見えた。


「まるでキメラみたいだな。」


そう言い、カメラのシャッターを切る。UBが来ても大人しくしてこんなことをしている自分に少し嫌気がした。


何か光がUBに走り、小さな爆発が起こる。


そのあと間髪入れずに巨体が飛び蹴りをUBの腹にいれる。


その巨体は巨人だった。


「来てくれたのか・・・・。」


腹にマシンガンパンチを何発も入れる。重い打撃音が響く。


UBもそれに抵抗するように角からビームを照射する。


それを巨人は間一髪避ける。


避けられたビームはすぐ近くのビルに当たり、ビルを爆発させる。だが、その地点はもう避難が済んでる筈であった。


避けた巨人は隙をつくようにチョップ一撃!角を叩き割った。


苦しみ悶えるUBだが、巨人は容赦はしない。


飛びだち、大空へ逃げようとするUBの右翼を掴み、力いっぱいに引きちぎる。


引きちぎられた場所からは骨の様な組織が見えた。


カメラのバッテリーが切れ、バックから新たなカメラを取り出そうとするとふと人影が見えた気がした。だが、もうみんな避難所の方に行っているはずである。


気になり、また見えた方向を見る。


人だ。


髪が腰まである長髪で、ワンピースを着て、スカートを履いている模範的な女性だった。後ろを向いており、顔は分からない。


「なんでこんな所に俺以外に人がいるんだよ!」


さっき少し距離が離れたビルもUBが破壊していた。こっちだってそろそろ危ないかもしれないのに。


俺は走って女に近寄る。


「あんた何やってるんだ!死にたいのかよ!」


顔を見る。端整な顔立ちが見えた。


「風香さん・・・・。」


だが、彼女の心はここにあらずであった。


「パラゴン・・・・。エスティーナ・・・・。」


意味不明な言葉を言い続ける風香。UBが目の前にいて困惑や錯乱しているのだろうか。


「何言ってるんです!」


「え・・・・?」


耳元で怒鳴ったせいか、風香は我に戻ったように柔らかい声を出す。


「いいから逃げますよ!」


彼女の手を引いてコンクリートやらが頭上へと降り注ぐのをなんとか避けながら避難所へと俺は向かう事にした。





美智子は走っていた。まだ少し信じられないのだ。自分の彼氏が今までこの街を守ってきた巨人だという事に。


なんであなたは1人で戦ってるの?私がなんとかしたい!


今の彼女はそんな気持ちしか無かった。


今思い出して見ると巨人かもしれないという節はいくつかあった。


イジメられている時に怪獣が現れた際、彼だけが居なかった。そしてそれに取って代わる様に巨人が現れていた。


他にも急にその場から消えていたりした。


「そうよ!私がもっと早く気づいてあげていたら!」


激闘を繰り広げる巨人との距離はどんどん短くなっていく。


私が見届けてあげていないと!私が気づいてあげないと!


怪獣が放ったビームは高層ビルに直撃する。


が、美智子は走る。彼女の頭上から降ってくるあまりにも大きな質量にも気付かず。





巨人は剣を形成する。


UBがそれに気づく頃には遅く、剣は左翼をまっぷたつに切り裂いていた。痛がるUBは巨人の剣を持っている右手を噛むが構わず巨人は剣でUBの腹に剣を突き刺す。


より力を込めて刀を突き刺す巨人。UBの声にならない声が響くが巨人には意味のない事であった。


巨人はよし!と思ったのか刀をぬく。


そうすると次の瞬間にUBは大爆発を起こし、消えていった。


街はまた壊れてしまったが、被害は今までに比べてあまりにも小さかった。


そして物語は大きな不幸をもってより大きなものへとなっていく。

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