第4話 間の戦い
「少し待ってください。」
バイクのキーを差し込もうとした時、淳は突如として言い始めた。何かに気づいたように。
「一体どうした?トイレか?」
俺も心配し、軽口を叩くように言ったが、そんな軽いものではなかった。
「います。敵です。」
淳のその言葉に嘘はなかった。
地面が揺らぎ、木枯らしが揺れ、積もった葉は震えた。地中から何かが吹き上がった。
地中の中から、吹き上がったのは異形の怪物だった。
その怪物はまるで恐竜だった。ティラノサウルスのように、鋭い牙を持ち、顎や口周りが目や鼻より前に突出していた。尻尾も生えており、立ち姿もティラノサウルスそのものと言ってもなんら遜色はなかった。
「なんだってこんな!」
俺の驚きもよそに、その吹き上がった恐竜は全身をだるそうに現した。その全長は7~8メートルはあった。
「お前、こんな体格差が10倍近くあるやつ、何とか出来んのか?」
俺の疑問は愚問だった。
「とにもかくにも下がってください。ここは僕がどうにか・・・!」
淳は生唾を飲み込み、覚悟を決めた。
「ウオォォォォォォォォォ!!」
胸につけてある青いペンダントを大空にかざした。
瞬間、淳は青き光の球体に包まれた。
そして光は中央を割るようにして人型の何かが参上していく。
まばゆいほどの青い光から出てきた姿は怪物ほどの身長を持っていた。
「前とサイズが違う・・・。敵によって変えられるというのか?」
シェアッ!!と意気込み、巨人は怪物に飛び蹴りを食らわしてみせた。
みぞおちあたりに入ったキックは怪物を苦しませるには十分だった。
キエエエ!と雄叫びをあげ、苦しむ怪物に休息を与える気は巨人にはなかった。
すかさず拳を腹にぶち込む。蹴りをぶち込む。
巨人の攻勢だった。
だが、怪物も黙ってやられるほど甘くは無かった。
腹の部分から針のようなもの出現し、巨人の正面を襲った。
巨人の胸にかすり、小爆発を起こした。
ぐわああああ!と巨人はうめき声をあげながら距離をとった。
怪物はすかさずまた針のようなものを胸から吐き出した。
そうすると巨人は手を大きく開いた。
巨人の全身を覆うような大きな膜のようなものが展開され、敵の攻撃をふさいだ。
怪物も驚いたのだろうか。一瞬そんな顔をしていたように見えた。
その一瞬すらの隙も巨人は見逃さなかった。
手の先にエネルギーを集中させ、手先が黄色い光に包まれる。
そして順に肩までその光に包まれる。
そしてそれを敵に突き出しまるでボールを投げるかの如く、エネルギー波として敵に発射した。
発射すると同時に光はビームのようにして怪物に衝突していった。
怪物はそれに耐えきれなかったのか食らった瞬間に大きな爆発を起こし消えた。
それを確認した巨人はまた青い光に包まれ、少年の姿に変えた。
「大丈夫か?」
俺が淳に近づくと淳は息をあげ、嗚咽を漏らしそうな声を上げていた。
「だ、大丈夫ですよ・・・」
そんな声を言ったが見るからにつらそうな表情をしていた。
「バカっ!どう考えても大丈夫じゃねえだろ!」
俺はどうしても言葉を強くしてしまった。
「いいんです!」
淳は強く言い切る。
「僕のこの力は秘密裏にされねばなりません。その為に今まで行われてきたんです!これくらいで根を上げる訳にはいかないんです!」
けほけほっと咳をたて、胸を苦しそうに押さえる淳。
「早く学校へ行きましょう。」
これだけ言われたら俺は言い返しもできず、バイクに淳を乗せるようにした。
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