目次
第1話 俺と告白女
「あ、あの……、わ、私と付き合って下さい」
桜の花びらはもうほとんど散った校舎裏の桜の木の下。俺は黒髪ストレートの清楚な雰囲気を持つ、目の大きなぱっちり2重の可愛らしい女子から告白を受けた。
「はあ!? いま何つった?」
俺の返事に戸惑う女子。この姿を見ると何とも言えない楽しさがこみ上げてくんだよな。
「え……っと、私と付き合って下さい!」
その女子は顔を赤らめながらももう一度、
これには流石の俺も驚いた。今までの女子はここでうわぁ、とかキモい奇声上げながら走り去って行くのによ。こいつは……、めんどくせぇな。
「聞こえてるよ、バカ!
うっせーな、眠てぇ時に大きい声出されると頭がガンガンすんだよ」
俺はその女子を突き放すよう、冷たく鋭い目つきで言い放った。
「ごめんなさい……」
女子は小さな声で謝った。おいおい、嘘だろこいつ。
「あー、眠い。帰るわ」
俺はそう告げて、女子に背中を向けて立ち去ろうとした。その背中に告白女は叫んだ。
「あ、あの……。返事!!」
俺は聞こえない振りをして教室へと歩いていった。
ここまでの話は俺が高校1年の時の話だ。入学してから俺は告白の絶えない日々を送っていた。そしてこの話はそのうちの1つ。ちなみに全部断った。
まぁ、何で俺がここまでして断り続けるのかってのはまた今度だ。
そしてこの告白女からの告白は1ヶ月に1回のペースであった。
そんなことを乗り越え、時は過ぎ高校2年に進級した。
最悪な事に2年の教室に入ると例の告白女がいたのだ。
名前も知らないその告白女。この1年どうなるんだよ。
「おはよう、盛岡くん」
うわぁ、やっぱり話し掛けてきやがった。
こんな時は無視だな、無視。
「あぁ、無視は酷いよ!! 挨拶くらいしてヨ!」
んだよ、このクソ女。
「朝からピーピーうるせぇな」
「えっ……」
あっ、やっべ。声出てたわ。
「だから、前にも言っただろ。眠てぇ時にうっせーって」
そう言って俺は机に伏せる。
「ごめん……」
告白女があまりにも弱々しくそう言うから少し心配になり目だけ動かし、告白女の表情を伺った。
泣かれたりしたら面倒だからな。
幸いにもその心配は無かったが、表情は曇っていた。
「だりぃ、女」
「何言ってんだよ、将大」
俺の独り言にそう答えたのは、俺の昔馴染み
「哲ちゃん、クラス一緒?」
机に突っ伏したまま訊く。
「そうだよ。てかさ、さっきの子めっちゃ可愛かったけど誰?」
「あのクソ女かよ。知らねぇーよ、あんなバカは」
ほんとあんな告白女なんて知らねぇよ。
「へぇー」
かなり棒読みだ。疑ってんだな、こいつ。
「本当に何の関係もないから」
それだけ言うと俺は途端に睡魔に襲われ、寝てしまった。
気づいた時には始業式も終わり、既に放課後だった。
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