第35話 子どもの頃なりたかったもの

子どもの頃、文集などで“将来の夢”を書くときに


本当になりたいものを書いた記憶が無い。


とてつもなく自意識過剰な子どもで、同級生たちに陰で笑われるのが怖かったのだ。


そんな私が本当は密かにいだいていた将来の夢は


「お嫁さん」


「養護学校の先生」


「幼稚園の教諭」


などだ。


子どもの頃から結婚願望が強かったので、早く結婚したかったのだ。


養護学校の先生に興味を持ったのは、向かいの家に住んでいた兄妹の末っ子ちゃんが、たぶん今にして思うとサバン症候群のような症状のある子で、その子と仲良くしていた事で更に知的障害や養護学校を知るようになって


そういったところの先生になることを夢見るようになったのだ。


そして幼稚園の先生に憧れたのは、父親の同僚であり家族ぐるみで付き合いをしていたところのお母さんが幼稚園の先生だったため、私は幼い頃より保母さん(保育士)と幼稚園教諭の違いを知った。


そして働いている幼稚園にも連れて行ってもらった事もあり、より興味を持ったのだった。


ところが、最初に書いたように文集には「お嫁さん」とも「養護学校の先生」とも「幼稚園の先生」とも書くのが恥ずかしくて「弁護士」とか「デザイナー」とか書いていた。


今思うと「弁護士」や「デザイナー」の方が難易度も高そうなのに何故そっちを書くのは恥ずかしくなかったのか思い出せない。


けれど本当の夢を書くのが恥ずかしかった思いは憶えている。


「あの子が結婚なんて出来るの?」と思われることや


「養護学校の先生?あの子、Aちゃん(サバン症候群と思われる向かいの子)の仲間だからか」と偏見を持たれる事に子どもとしては耐えられなかったことや

(もちろん今は偏見は無い)


「幼稚園の先生?あんな、ちっこいのが幼稚園の先生になれるの?」(私は幼稚園の頃からほとんど前習えで腰に手を当てる先頭だった)と言われるのでは?と勝手に思い込んでいたからだ。


結局、叶った夢は「お嫁さん」だけだ。


けれど思い返してみると、子どもの頃から偏屈な子だったなと思う。

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