濁り

小池とうや

第1話 始まりは突然

ぶぶぶ ぶぶぶ ぶぶぶ

ぶぶぶ ぶぶぶ ぶぶぶ

ぶぶぶ ぶぶぶ ぶぶぶ

携帯のバイブレーションが教えてくれた。母親から電話だ。


「もしもし、どうしたの?」

「もしもし、恵子。あのね……」

そういうと、はぁ~と重苦しい溜息をつき母はこう言った。

「父さん、癌なんだって。」

「えっ……。」

父さんが、癌。ガーンなんて、シャレにならん。まだ、58歳だよ。

「肝臓癌だって。もう末期だって。」

母さんは力の抜けた声で言ってくる。

「来週手術するんだけど、あんた一回帰ってきなさい。

 父さん、喜ぶから。」

「わかった。でも、仕事休めるか店長に聞いてみるね。

 また連絡するね。」

別に、忙しくないけどこれ以上話を続けたくなかった。

あんまり詳しく聞くのが怖かった。

「うん、お願いね。じゃあね。あ、父さんの手術は9月18日だよ。」

「わかった。18日ね。じゃあ。」


私は今、東京の北千住に住んでいる。

高校を卒業して、北千住の美容室の見習いから通信で美容師免許の資格をとった。

今は10年目になり何とかスタイリストとして、食べている。

「はぁ~~~~~~~~ぁぁぁぁ」

お店の休憩室で、深いため息をつく。

 父さん、いつから会ってなかったけなぁ。そういや、出張で3年前に父さんが東京に来て、帰りの新幹線が来る2時間くらいの間、東京駅の地下で一緒にビールのんだっけ。それ以来じゃん。


やばい。涙出る。

休憩も残り10分あるけど、早めに仕事に戻ることにした。







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