傭兵の本懐。
ある会社に、業務委託の完全歩合で働く部署Bがあり、社内で“傭兵部隊”と言われていた。
業務委託なので、ノルマや煩わしい人間関係などに縛られることは無いが、結果を出さなければ入ってくるお金はゼロ。一方、正社員が所属する部署Aには目標が課せられたり、上司との折り合いをつけることなども求められる。
ただ、正社員は成果ゼロでも給与は入ってくるし、会社からも守られている。部署Bは成果を残さねばならない上に、下手を打ったら切られる危うい立場だ。
ある日。社内の業績が部署Bにより、劇的に上がったことが判明した。
「さすがは、傭兵部隊!」
と、経営層は持ち上げた。日頃、部署Bよりもインセンティブの割合が低いことから、影で不満の声を漏らしていた部署Aの正社員たちも、その力を認めざるを得なかったのだ。
その次の日。経営層からのみならず、会社全体から称賛された傭兵部隊は、立ちどころに消えていた。
──ライバル企業から、ある会社よりも数倍良い好条件を提示され、即日で移ったのだ。
……これは当然のこと。正規兵と違い、傭兵は褒められるだけで喜ぶようなことはない。大切なのは常に、自らの手柄に見合う具体的な報酬だけなのだ。
部署Aの正社員たちは「恩知らず」と罵った。正規兵として守られているのに不満を漏らす彼らに、傭兵部隊のことは、到底理解できないことだったのだった。
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