幸せな結末。
真也は「ここに来て良かった」と心の底から感じていた。実際、この場に居るもの全員が多幸感に包まれていた。
「地道に働く社畜なんてバカっしょ?」とあざけるように語る者に対し、「だよな~」と強調する若者たち。心地よい。
この安いバーで深夜、真面目な顔をして若い男女たちは熱く語り合っていた。妙な熱気にあてられるせいか、彼らが話をしているテーブルの近くに客が座っても、すぐに席を立ち帰っていく。バーのマスターもそれを止めようとはしなかった。
真也とはみんな知り合いや知人同士というわけではない。「親友がすぐにできる、社会人サークル!イチから人間関係を築くなんて、非効率です」というネットの書き込みを観て集まってきたのだ。
最初はバスケットボールなどをしながら親睦を深める。「人間関係をコツコツなんて時間の無駄」というだけに、話題も急に深まっていく。
「人間関係に手間暇かけてられないし、頭の悪い奴のやることだ」
真也の発言にみんなが喝采を送る。
そんな若者たちを微笑みながら見守る、バーのマスター。実はネットにはマスターが書き込みをしていた。そして、彼の笑顔だけ、意味が違っていたのだ。
──いずれ、オレのやっているマルチの餌食となる養分たちが──と、マスターは再び笑みを浮かべ、新しくやってきた若者をどのように勧誘すべきかを思案する。手練手管により、既に籠絡した若者たちを利用することも考えながら。
そもそも、コツコツ紡いでいくべきことをすっ飛ばした薄ペッらい行動の結果は、当然のことながら、安っぽく帰結するのだ。
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