作戦と執念 7/20
そうとなれば、作戦開始だ。雪ノ下が全力疾走でフィールドを駆け巡りだす。できるだけ山野と出会って欲しいところだ。俺と冷姫は雪ノ下とある一定の距離を保ちながら、敵に見つからないようにゆっくり進む。ここでは、音魔法は使わない。色々後で使う必要があるからな。
『キャプテン、山野さんを発見しました。作戦通りに進めます。準備お願いします』
「了解、気を付けろよ」
良かった、作戦通り山野だ。俺は、雪ノ下の言う通りに音魔法の準備に取り掛かる。ここからが本番だ。
「雪ノ下を発見した!敵は生きている!」
山野の声が聞こえる。だが、それは、俺達だけにだ。『アルマドゥーラ』、残念ながらお前達は完全に『ブレイヴ・ハーツ』の罠にかかったのだ。今日の勇敢は、甘くないぞ。
「
通信媒体へ届く音を消す。これは相手に気付かれていない。冷姫とアイコンタクトを取った瞬間、一陣の暴風が沸き起こる。これにより山野は冷姫の存在に気付く。だが、その風の勢いに山野は堪えられず、俺達に向かって進んでくる。雪ノ下と冷姫は一定距離を置き、俺は雪ノ下よりの物陰に隠れる。
山野はそこで、俺が一人行動をするわけがないと悟る。それは俺が弱いからであり、必然的な思考回路だ。だが、その判断がより一層俺達の作戦に引き込む。
「二人とも!7時の方角だ!そこのタンクを撃て!一網打尽だ!」
爆発は全くもって起こらない。それもそのはず、『ブレイヴ・ハーツ』には通信手段は用いることができないというデメリットを孕んでいることを考慮しておくべきだったからだ。『アルマドゥーラ』の情報欠陥だな。そのデバイスを使った瞬間、自らの首を絞めることに気付くべきだったな。あっちから7時の方向、つまりこっちから見て1時の方向。そこにはタンク以外の障害物は存在しない。これで二人の隠れている場所が把握できた。
「1時の方角だ!行くぞ、雪ノ下さん!乖離せよ『双龍円月刀』!」
俺の片手剣『双龍円月刀』のスキルは、双剣に『分裂』。分裂とは言え、分裂する前と大きさは変わらない。これを発明した理由は、一刀流と二刀流を使い分けたかったわけではない。片方の剣がある性質を持つと、もう片方の剣も同様の性質を持つという性能だ。要するに、片方の剣が燃えるほど熱ければ、もう1つも燃え盛るということだ。
片方の剣を雪ノ下に渡し、炎で纏う。完全に熱くなる間に、タンクの上に登る。ヤカンの金属部分を触ったような感覚だが、懸命に我慢する。
「爆ぜろォォォオ!!!」
俺と雪ノ下は、双龍円月刀を振りかぶって投げる。冷姫が風で援護しているようだ。剣が暴風に乗って、タンクに突き刺さる。山野と相対しながら援護なんて器用な奴だ。
ド派手な爆風が起こる。しかも、暴風によって、1時の方角にあった障害物が大半消し飛んでいる。
勝った。あとは山野だけだ。山野は唖然としている。
「音魔法……。音も消せるとか、意味がわかんねーほどチート能力じゃねえか……」
流石の山野。音を消されていたことに気付いているのか。
「そうだよ、山野。冷姫!任せた!」
「だが、俺達はまだ終わっていない。もう一度味わえ」
まさか!?1時の方角を見直す。そこには、煙の中に明らかに人影が1つ浮かんでいた。全く姿は見えないが、弓使いなのは確かだ。あれで死なないとかアリかよ……。負けたよ、山野。お前達の執念には。
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