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 「ボツですね。」

 と担当は言う。

 「ボツですか。」

 僕は決まって、こう返す。

 担当がボツを出す時。それは決まってこんな時だから。

 担当は二日酔いの昼間に、僕の作品をボツにしに来る。

 プロットを上げた時でも、原稿が上がる直前でも、ボツにされたなら書き直す。

 僕と担当の関係は、そういうことで成り立っている。

 担当のことを、酷いとかそういう人もいるけれど、僕はそう思ってない。

 担当は、担当のボツは正確で、的を得ていて、間違いだと思ったことは一度もない。

 だから僕は、こうして作品をボツにするのだ。


 「ボツですね。」

 そして世界は、ゴミ箱に投げ入れられる。

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