この僕こそがライトノベルの主人公

冷泉 小鳥

第1話 僕が、僕こそが主人公だ!

 僕は目を覚ました。ふかふかのベッドの中に埋もれている自分に違和感を持つ。僕はいつも布団を敷いて寝ているのであり、ベッドのようなハイカラなものを使用したりはしない。そうだ、僕はいつも和風な生活を送る、ごく普通の男子高校生だったのである!


 僕の趣味はライトノベルを読むことだった。ライトノベル以外の本や漫画を読むことはほとんどなかった。僕の創作との接触面は、もっぱらライトノベルを通して行われていた。


 僕は、この部屋の配置を、どこかで見たことがあることに気がついた。確か、この部屋は「愛と奇跡のアルカイオス」の第一回目の挿絵で描写された場所だ。大抵、ライトノベルの初めの挿絵は半裸のヒロインを載せるのが定番だが、「愛と奇跡のアルカイオス」はアニメ化と打ち切りから遠い場所を漂っていた中途半端なライトノベルだったので、極端なテンプレとは無縁だった。


 この小説の特徴は、主人公が最強であることだ。その代わりに、主人公にはメンタル面で様々な試練が課されることになっている。

「力を持つ者は、その代償を払わなければならない」

 これが「愛と奇跡のアルカイオス」世界の根本法則であり、生まれながらにして、何ら代償を払うことなく強大な力を得てしまった主人公は、後払いで高い代償を払わされる運命にある。

 まぁ、いいだろう。未来を知っている僕ならば、原作主人公以上に主人公らしく振る舞うこともできるはず。ハーレム系ラノベの常として、ヒロインも全員僕のもの。


 ああ、この世界は素晴らしい!僕は朝日を抱きしめ、はじまりの日を祝った。

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この僕こそがライトノベルの主人公 冷泉 小鳥 @reisenkotori

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