ふたつ色の眺め

結局、

僕は、自分の独白しか持っていない。

手に手を取るための言葉を交わそうと努力してきた。

でも、自分の独白しか持っていない。

誰かの気になるよう、こうやって、自分の世界を表現している。


次は、ニコニコ動画。

実況動画を眺めている。


ある時、「辛い時に見る動画」だったか、そんなものを見つけた。

静止画に、音楽と、コメントが流れている。

音楽は、僕が知っているアーティストなどの曲で、「情報として」聴いたことのあるもので、耳馴染みであった。

耳馴染みな心地良さの中に、そこにコメントが流れている。

下流へと行き着き、流れつくように。

匿名性を帯びた短い独白。それを慰めるコメント。心知らずなコメント。

辛い気持ちが切々とざわめいている。溢れている。

重たい、重さで渦巻く想いに、僕は特別なことを眺めている気になった。

僕の独白もそこに打ち込もうかと思った。

でも、ためらった。

何故だか、それを眺めているだけの視点で十分に思った。


誰かが、誰かのコメントに、

誰かが、誰かの辛さに、手を宛て、コメントする。

「現実に居ない」誰かが、「画面越しに居る」誰かが、送っている。


その誰かの人生を感じた。

それを確認できただけで、十分だった。



最近、グレー色の服を着ている。

はっきりとしない色。色がないと云ってもいい。

もしかしたら、あの動画、同じ色で溢れていたのかな?

でも、確かに、誰かのコメントに、画面越しの誰かが、確認できた。


それは、色の上に、色を重ねてくれたのかな?



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