実験・熱さと寒さ

「さ、寒いです」

 ウォータースライダーを体験した後、彼女は体を震わせて言った。

「水は残って無いみたいだがな」

 水がかかった時の寒さだけが残っているのだろうか……

 それにしてもシートベルト無しでウォータースライダーに乗る根性には驚いた、わけがわからん。

 因みに俺は安全な席でビニールを被っていたので殆ど濡れていない。

「うう……」

 歩きながらも寒そうに震える彼女……濡れているわけでは無いから自然に乾かないから厄介だな

「……ああ」

 変温動物と似たような考えならいいのか。

 俺は自販機で熱いココアを見つけて買う。普通ならこのまま渡すのだが……

「人がいない場所は……」

 俺と彼女は施設の裏に行った。

「ほら、飲め」

「あ、ありがとうございます」

 彼女はゆっくりと缶を傾けて

「熱っ」と缶を落としかけた。

「そんなに熱かったか?」

 少し移動したから大丈夫だと思ったが……

「いえ、あったまります」

 笑顔の彼女を見るたびに、俺の胸はチクリと痛む。

 そろそろ……解を出さなければいけない。

 俺はそう、自分に言い聞かせた。

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