幽霊少女との共同生活

「これ、美味しいですね!」

「そうだな」

 目の前にはごはんとおかず、そして彼女。

 明日の実験の予定を伝えた後、彼女はここに泊まると言ったのだ。

 そして共に料理を作り、今に至る。

「この肉じゃがとか上手く出来ましたねー」

「うん、ちょうどいい柔らかさだ」

 因みにさっき知ったのだが彼女、食事が出来るようだ。

 他の人から見れば空中で食べ物が消えていくという謎の光景になっているだろう。

 実際窓ガラスの反射で見てみても食べ物は空中で消えるように見えた。

「腹は減ったりするのか?」

「いえ、特に無いですね。 味は感じますけど」

「ますます意味がわからん」

「そういえば右利きですよね?」

「そうだが……何でだ?」

「いえ、さっき料理した時左利き用のハサミがあったので」

「ああ、そういうこと」

 知り合いに何人か左利きがいるからなのだが……

「妹が左利きなんだ」

「仲がいいんですね」

「まあな」

 食事の片付けも終わり、彼女はテレビを見ていた。

 一方の俺はスマートフォンを弄っていた。

「彼女さんですか?」

「うわっ!」

 いきなりこえをかけられて飛び上がる。いつの間に後ろに……

「見ましたよー、彼女さんにメールですか?」

 彼女はニヤニヤとしている。

「遠距離恋愛だ、しばらく会っていない上に最近は連絡もつかない」

「えー、つまんない」

「恋バナなら一人でやれ」

 だから左利きの話も妹にしたのに……

「全く……」

「怒ってますか?」

 ため息をついた俺を彼女が心配そうに覗き込む。顔が近くてドキリとする。

「い、いや……別にいい」

「よかったー」

 笑顔に戻った彼女を見て、また胸がチクリとした。

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