1-1 もう一つの始まり

 この地球という人類が頂点に君臨し国を創り化学を発展させている星。


 時は2116年。


 長い年月を重ねていき、ここまで至ったこの星で、この世界で、積み上げてきた歴史というものは、愚かで恥にまみれていた。


 集団に置いて一部例外は、あるが周りと違うと発生するいじめ。


 才能がある人間が同じレベルの人物を育成するのではなく、自分より発展していない他者を侮辱する見下し。


 人種や外見、富豪と貧困での金の格差、身体の運動能力などのこの世に生誕を果たした時の状態格差で起きる差別。


 国の多数いる者ではなく、少数の権力者の勝手な意見での自国の総意と偽る、或いは、権力者が国民を洗脳し賛成させることなどの要因から発生してしまい、罪もない大勢の人間が虐殺される戦争。


 なかなか自身の得意な事柄を見つけることが出来ず、自分の可能性を引き出せない。


 それにより、有象無象のただの人間としての一生を送ってしまい、その者に実は眠っていた才能を無意味なものにしてしまう。


 人を見る目がない者が集団などで上に立ち、相手の可能性を見出せない。


 それにより、本来その界隈どころか街、自国、あるいは世界で活躍出来た未来を、机上の論理のままにしてしまう。


 さらには、輝ける人生を遅れず、このままでは自分が不幸なままで辛い人生を送るのが嫌だと、思考が歪み、悪の道へと進む者もいる。


 このような悲劇的な過去を悔やみ、その間違いだらけの過去を反省し、現在のこの世界を平和にし、これまでの世界よりも多くの人が輝けるようにする為に、2040年から18年ほどの時間けかけ、世界中の国々の力を結集し2058年に創られたVRMMOのゲームの世界をもう1つの現実と定めた。


 世界を肉体でのリアルFと電子でのリアルSの2つにする事で可能性を広げた世界。


 そして現在、日本の関東地方に属する県のある街に、時刻は9月17日木曜日7時50分──


「待ちくたびれたぜ……!!セカンド・ワールド!!」


 自室にてやや長髪で右前髪が3束跳ねている1人の少年が、息を荒げ高ぶる感情のままそう呟く。


「あぁ、長かった……やっと、この時が来たみてぇだ!!」


 彼の名前は【先法 真理守】(せんほう まりす)


 今日は彼の13歳の誕生日。


 この世界では一定の年齢になるとセカンド・ワールドというVRMMOの世界に入る事になる。そして、そのことを義務付けられる。


 ただし、その年齢未満の場合は一切入ることが出来ない。


 セカンド・ワールドは、もう1つの人生としてゲームのフルダイブVR世界で、輝ける人生を送れる為に半世紀ほど前に世界中の優秀な人材が開発したもうひとつの現実である。


 真理守は、最初の現実である肉体での世界、ファースト・ワールドでは学校での勉強は出来なくはないが、周りの同級生から『頭良いね! 凄い!』褒められたりするレベルではないし、運動は下の上の運動音痴と呼ばれる人達よりは、出来なくもないレベルである。


 さらに、中学1年生ではあるが、小学生中学年くらいの腕っ節が強い相手と殴り合いをした場合、負けてしまうくらいの喧嘩センス。


 だが、真理守は想像力には自信があり、セカンド・ワールドは電子での現実であり、アクション系RPGゲームのような世界であるので、その想像力がSWで輝けるようになると考えている。


 彼の地域である首都外の関東地方では、13歳になるとセカンド・ワールドに入る事になっている。


 彼は、幼い頃からその2つ目の世界に憧れたていて、保育園や小中学校の読書は、セカンド・ワールドについての本を延々と読み更けているほど。


 その為、彼は例えるなら、とても美味と言われ伝えられている美食動物の肉を目の前でそれも数時間や数日どころか、年単位で食すことを待たされている様な、美食家な獅子の如く、苦しい時間を過ごしてきた訳だ。


 ほんの数分前に食事を済ませ誕生日という事で学校を休み、宿題を前日のうちに終わらせ、ログインの最中に困らないようにトイレを済ませておいた彼は、セカンド・ワールドへ入る為のチェンジ・ヘルメットを被る。


 そして彼は長年待ち焦がれつづけ、高まらせていたとても強い感情を高ぶらせ、待ち望んでいた念願の多重世界へとログインする。


「んじゃあ! 行くぜ! ワールド・チェンジ!!」


 彼の視界が暗転する……


 そして、これより真理守のもう1つの人生が今始まる。

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