僕達はこの狂った世界に生きている

雪瀬ひうろ

第1話

 この狂った世界へ生きる者たちへ。


 間違っているのは、世界だ。

 正しいのは、彼女だ。

 この物語は、そのことを伝えるためだけにある。決して読者を楽しませたり、感動させるための物語ではない。もしも、そういう物語を期待している人は、すぐに読むのをやめてもらって構わない。僕はそのことを決して責めようとは思わない。何もかもが狂ってしまったこの世界で、唯一正しい彼女を認めることは難しい事だ。でも君がこの世界の真実を知りたいと、信じてみたいと願うならこの物語を読み進めてほしい。 

 最初に予告する。この物語の中では、君が「理不尽」と感じる事が起こりうる。君が「現実の常識」と考えているような事が覆される可能性がある。例えるなら、それは天地が引っくり返ったり、太陽が二つに別れるような途方もない事だ。こんな風に「理不尽」なことがこの物語の中では語られる。この物語の読者である君は、もしかしたら呆れるかもしれない。酷い物語だと蔑むかもしれない。そういった誹りは免れないと思う。でもそういう風に感じる君はまだこの狂った世界に囚われているのだ。

 もしもこの物語に「理不尽」を感じなければ、君は正しい彼女に一歩近づけたということだ。その助けになれる以上に、この物語を綴る僕にとって幸いなことはない。

 前置きが長い物語に名作はない。名作を作りだしたいと願っているわけではないが、僕の拙い筆で、正しい彼女に近づける幸運な人を減らしてしまうことを、僕は恐れる。

 だから始めるとしよう。

 この何もかもが狂ったこの世界で戦い続ける少女の物語を。

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