勇気が出るのはいつもあと

@monopolyjack

第1話 ホームランとお前らが叫んだ

今日も涙がつたう。何度目の告白だろう。何度目の失恋だろう。自問せずとも分かっている。3度目だ。校舎の屋上で私は恋を数えた。...今のパス、恋を数えたは失恋中の私にはキザすぎる。とにかく、失恋した。空は夕焼け色で、焼き芋が食べたくなる。失恋しても腹は減るのだ。私は、スマホで、近くを走っている焼き芋屋さんを探しながら、告白を回想した。


野球場。中学生の野球チーム(10人くらい)が、練習してる。監督の怒号と選手の応答が湿度をいくらか下げているようにみえた。その様子をフェンス越しに見ている、長髪の学生服の男とショートカットの女性。男と同じ校章のセーラー服を着ている。

男が口を開く。

「なんの話ですか?こんなとこに呼び出して」

女が照れくさそうに始める。

「いや...前からね...」

流行りのドラマ主題歌がひびく。

男のケータイからだ。ケータイを開く。少し考え込んでから、何文字か打つ男。

「ごめん、気にしないで。それで?」

ケータイを閉じて、女に謝って、促す男。

「うん...私...あなたのことが好きです...」

打球音が響く。続いて、ホームランの声。いつの間にか練習試合開始。球を見つめる少年たちの目は当然、告白になんて興味がない。ある1人を除いては。


つづく



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