第10話 隠された世界に発見された朝

見知らぬ、一方で慣れている、そんな駅のホームに向かう階段を焦って降りている。普段降りる段の数よりも多く、いつの間にか足元にあるのは階段ではなく、幾重にも重なり合った電線だった。


もはや戻ることも叶わず、そのまま、まごついているうちに地上に降り立つ。ここは地下か。見上げると確かに普段の生活をしている世界が見える。毎日使うホームもあれば、ただ眺めるだけであったホームもあった。これらが同時に認識され、そしてそこにいる人々が見えた。


自分のいる、先ほど降り立った場所を私は、一度として見下ろしたことはなかった。存在していなかったのか、あるいは存在を知らなかったのか。


果てしのないような砂地が広がっているこの場所はいったい何なのか。皆目わからない。単に興味がなかっただけなのか、この空間が突然現れて、私がそこにたまたま迷い込んだだけなのか検討もつかない。単純に戻る道が見つからない。それは現状のなかで、数少ない、確かなことのひとつだ。

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