第9話 失われる時をモットーにして

遅れてやってきた清廉な詐欺師、そして善良な詐欺師と合流する。薬の味しかしない夕餉はもうたくさんだった。安っぽい食後のお茶で無理やりにでも喉を潤した彼ら(私を含めた)は、広間に出た。オリーブ油の詐欺師はすでに姿を消していた。


広間からはさらに4つの扉のさきに繋がっている。どの扉を使っても、辿り着く先はひとつである。ということはつまり、この広間には本来、もっと大勢がいることが想定されておるわけで、しかるに詐欺師たちは時間を金で買って、その混雑をごまかしていた。


小箱の配列された鉄の塊に供給される銀の雫は、思い思いの目的を負った詐欺師たちの財産を守護し、代償として与えられた心もとない針金が、彼らの懐にそっと仕舞い込まれる。


電気椅子に自ら身を任せる詐欺師は、眼前の暗闇を執拗にじっと見つめ、彼なりの救済が訪れるのを素直に待ち続けるのだ。確かにそれはくるのだから。

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