第120話 海のアブダラーと陸のアブダラー

 今回のタイトルは、まさに海の人、陸の人をテーマにした童話のタイトルです。


 同じ名前のアブダラーという二人がメインのお話。

 漁師だったアブダラーは、海で人魚のアブダラーを網にひっかけてしまいます。これをきっかけに急速に友情を深めていく二人。海のアブダラーのおかげで陸のアブダラーはなんとお城の大臣にまで大出世してしまいます。

「一度、君の国へ行ってみたい」と言った陸のアブダラーを、海のアブダラーは喜んで海の底に連れて行きます。

 しかしそこで、見慣れない陸の人を見た海の人たちは陸のアブダラーの姿を散々嘲り、侮蔑します。ひどくショックを受けた陸のアブダラーを見て海のアブダラーは後悔し、「私と貴方は住む世界が違う。もう、二度と会わないようにしましょう」と告げて別れるのでした。

それから陸のアブダラーが何度海に向かって呼んでも、海のアブダラーは決して姿を現そうとしないのでした……。


 悲しい友情喪失のお話です。

 読み終えた長男は、納得がいかないようです。

「なんで(陸のアブダラーが)もう怒ってへん、て言って呼んでるのに、(海のアブダラーは)出てこおへんの?」


 後で聞いてきました。

 うーん、難しい。なんて答えればええねん。


「友達に嫌な思いをさせたくないからちゃう? 本当は友達になったらあかんのに、友達になってしもたからな。秘密の友達でおればよかったのに、バレてしもて……」


 友情に盛り上がってる最中は気がつかなかったけど、今更ながら相容れない世界にいる相手だと悟った……そんな感じでしょうか。

 自分で言いながら、ふと映画の「JSA」を思い出しました。(国境で韓国と北朝鮮の兵士が秘密で友情を育むストーリー)


「ふーん……」

 分かったような分からないような返事をする息子。


 ひみつのともだち。

 何処かで聞いたなあ……。


 ああ、アレか! メイとガブ!

 大ヒットした絵本「あらしのよるに」の二匹。最初、私はあのお話をロミオとジュリエットのような悲恋ストーリーだと思っておりましたが、男同士の友情ストーリーなのですね。


 ――前置きが長くなりましたが、男の友情についてお話したいと思います。


 さて、男同士の友情というのは、私だけでなく、ほとんどの女性が憧れるものだと思います。

 身近な例えでは、試合終了後、高校球児たちが抱き合って泣くシーンとか。

 アホなことをひたすら延々と真剣にやっているとか。

 有名どころでは、映画のスタンドバイミー。

 ケツを蹴っ飛ばして励ましたり、言葉は少なくともそばにいるだけで深く通じ合ったり。

 崇高レベルの爽やかで熱い友情。

 あれ、女性の私たちには難しい。どうやっても到達出来ないものではないかなあと思うのです。

 やっぱりなんといいますか、女性は少し粘着的なものが入る。

 からっと突き抜けてるのにものすごく親密……なんていう感覚、女性にはまず無理。

 だからこそ憧れますね。

(でも、現実的に困ったことが起きた時には、頼りになるのは女性同士の方、という気はしますけど。……助け合い精神?)


 あと、男性同士の友情というのは純粋なところが強いように思います。

 先に挙げたアブダラーや、JSAや、メイとガブの話。

 これは、女性同士なら起こらない話だと思うのです。そんな危ないことはしない。

 男女の関係ならあるかもしれませんが。

 男同士だからこそ、なり得たのでは?


 映画のJSAで四人の兵士がまるで子供みたいにじゃれあって遊ぶシーンがあるのですが。エエ年のおっちゃんも含んだ優秀な兵士たちがですよ。そんなことあるわけない……いや、男同士ならあり……えるのですかね?


 なんにせよ、女性の私たちには手の届かないものでありますので、男同士の友情というものは嫉妬にも似た憧れを感じてしまうのです。


 これ、反対に男性側から見た私たち女同士の友情というのはどういうふうに目に映るのでしょうね?

 私たち(女性)があちら側に憧れるほどには、男性陣はこちら側には大した感情は持たないような気がするなあ。





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