第74話 ミッションインポッシブル

 息子が小学校入学までにできるようにしておくことリストを、二月に行われました小学校入学説明会でいただいたんですが。


『自分で着替えられること、服をたためること、返事ができるようなること、自分の名前を読めること、書くこと……etc』

 その中に、ひとつこんなのがありました。


『食事開始10分間は黙って食べられるようにしておくこと』



 ……うーん、ミッションインポッシブル!


 無理でしょう! どう考えても。

 ウチの子には無理です!


 口から生れてきたような息子。

 ひたすらしゃべりどおし。黙っていられない。声は大きいし。

 おしゃべりでうるさい男子はあんまりモテないんじゃないのかな。


 自転車に乗る時でさえ、だまって乗っていられない。


『ブーン、ブンブンブンブン!!』


 バイクのつもりでしょうか。常に効果音を口で出しながら、近所中を走り回っています。


『黙って乗ってられへんの?』


 ある日、一緒に散歩中の私の姉が長男に聞きましたら。


『ううん、黙っていられるで』


 と答えて、何も言わずに自転車を漕ぎだした息子。

 しかしその10秒後。


『ブーン、ブーン! ブンブンブンブン!!』


 再び効果音をふかしながらぶっちぎりで走り去っていきました。――



 男の子にしては話すのが早く(一歳すぎたあたりから、『お疲れ様です』『えろう、すみませんなあ』等、来客の言葉をおうむ返ししてお客様をびっくりさせた息子)小さいころからよくしゃべる子やなあと思っておりましたけれども。

 本当にうるさい子なんです。

 帰宅したら、マンションの中から息子の声が外までまる聞こえ! で恥ずかしいと思ったことがよくあります。(主人と話しているようですが、息子の声しか聞こえない。まあ、子供の声はよく通るのでそういうことは多々あると思いますけど)


 それでも、ミッションには挑戦あるのみ。

 小学校入学に向けて、夕食時に果敢にミッションに挑む息子でありました。――


 ――夕食スタート。

『いただきます』を言い終えてから。


「ミッション、スタート!」(自分でスタートをかける息子)


(1分後)


「……そういえば、今日なあ。〇〇君がなあ、途中で帰りはってん……あ、しゃべってしもうた……ミッションスタート!」


(30秒後。隣で食べるジャイ子を見て)


「あほ。△△、めっちゃこぼしとる。あはは……あ、ミッションスタート!」


(20秒後)


「これ、めっちゃ美味しかったわ。ちょうどええ味やったわ。☆☆感動したわ。もう一個、食べていい?……あ、ミッションスタート!」


(40秒後)


「……え、今日って何曜日やったっけ? ドラえもんある日? ……あ、ミッションスタート!」


 ――3分間に何回ミッション再スタートしてんねん!

 ウチらは気を使ってみんな黙って食べてんのに。


 他のコはみんな、できるものなんでしょうか?

 いやいや、他の子も10分間なんて黙っていられないのじゃないのかなあ。


 私の父が、毎回時計を指して、長い針がここまでくるまで黙っとくんやで、と示しますが。

 一度もミッションを遂行できたことはなく、今日までいたってしまいました。

 本日より、学校で給食が始まった息子。

 他の子と同様に開始10分間は黙って食事できたのでしょうか?――


 ――もう小学生ですから口も達者になり、いろんな言葉を使い始めた息子。

 そういえば最近、息子は新しく聞いて覚えた言葉を使いたがり、たまに間違った使用法をしていたりして笑ってしまいます。たとえば。


「この間、△△君を吸収してん」


 ……何事?! (いっしょに遊ぶ、等の意味だと思ったらしいです)


 かと思えば、さらりと難しい言葉を使ったり。


「昨今(さっこん)、☆☆、疲れることばっかりやし」


 昨今! なんて、お母さん文章でしか使ったことがない言葉なんですけど! 口頭で使ったことないで? どこで、聞いたん?


 また、まだ聞いたことがない言葉は、印象で悪口に聞こえてしまうことがあるらしく。


「☆☆、△△君といつもおしっこ行くねん」(息子)

「あはは、連れションやな」(私)


 連れション、が悪い意味に聞こえてしまったらしく、心の琴線に触れて泣き出す息子(すぐ泣くんです)。あわてて、連れションの意味を説明。


 昨日は母に質問していました。


「『無言』、てどういう意味?」


「……あんたと反対の意味や」










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