第62話 ぎっくり腰5
※今回はテーマが排泄になりますので、ご注意ください。
入院して三日目、四日目と経ちました。
ベッドでじっとしているだけですが、意外に一日は早くあっという間にすぎました。
しかし、腰に何ら変化は見られません!
三日目には動けるようになってるんじゃないの? という期待は見事に裏切られました。
食事は寝て手を伸ばし食べ、相変わらずベッドに貼りついたように横になっている姿勢のまんま!
姉がギックリ腰はあるときを境に突然ウソみたいに痛みが消えるから(姉は経験者)と、言ってくれたのですが。そのときがいつくるのかと、ひたすら待っていたのですが。
ほんまに? いつやの? ほんまに痛み消えるの?
不安になってきました。
そして日が経つにつれ、ひとつの重大な問題が浮上してきました。
それは。
トイレの、大、の方です。
小は管入れてもらってますんで問題なし。
大、の方です。
入院してすぐ、看護師さんには大のことを聞いたんです。
「便器があるんですよ。……それを腰の下に入れてベッド上でしてもらうしかないですね」
「……腰を上げる姿勢になるということですよね?……」
無理! そんなん、絶対に無理! 寝返りすら痛いのに!
私、痛みが治まるまで便秘でいい! 絶対、出なくていい!
それを聞いた私はそう決心しました。
しかし。
辛い。おなかが張って辛い。
私は生来、便秘とは無縁の人間なのです。こういう人間が4日間も出ないとなると辛くて仕方ありません。
出したいなあ、と思うことが一日で2、3回ありましたが通り過ぎるのを待っておりました。
でも、4日目となると。
だ、出したいな。
……決心しました。
ナースコールで看護師さんを呼びました。一度目は用意が間に合わず便意が消えちゃいました。二度目は看護師さんが二人、すっ飛んできてくださいました。
「いける? いける?」
心配そうにそろそろと動く私に心配そうに声をかけてくださる看護師さん。わたしにも分かりません!
とりあえず電動ベッドの上半身だけ起こしました。
うんぎゃああああ!
それだけで痛い!
でも、我慢しました。出したいから! 今だけの我慢!
「ゆっくりとマイペースでいいからね!」
看護師さんに励まされ、なんとか手伝ってもらい下着をとり……便器をセットしてくださるのに合わせお尻をもちあげようとしましたが……。
ズッキーーーーン!
「だ、だめですっ!」
やっぱりダメ!
悲鳴をあげ、ベッドに倒れ込む私。あわててベッドをもとのように倒してくださる看護師さん。
「これは……オムツしかないですね」
ため息をついて看護師さんはそうおっしゃいました。
やっぱりそうですか!
私は涙目で頷きました。
看護師さんが産褥用のナプキンをとりあえず代わりに着けてくださいました。
私はメールで姉にオムツを購入して持ってきてくれるように頼みました。
屈辱……。屈辱やけど仕方ない。
あとは、オムツの中で排泄することばかり考えていました。
出さねば、出したい、出す、出せ、出せる、出そう……!
ああ、私、今人生で一番ウ〇コのこと考えてる……!
でもね。
排泄しようと思っても、あれ、できないですよ!
トイレ以外の場所で出すなんて!
亡き祖父がオムツでの排泄を最後まで拒んでトイレに行こうとして何度も転倒したことを思い出しました。
やっぱり抵抗があります!
ジャイ子とかいつでもどこでも立ってても座ってても寝ててもウ〇コするけど。あの子、すごいなあ。どこでもウ〇コすることってすごいことやったんやな!
ジャイ子を尊敬してみたり。
それでも便意がくるたびに私、努力したんです。
でも無理でした。
座る姿勢がとれれば、可能だったのかもしれないのですが。
まっすぐベッドに寝たまんまで、おなかに力を入れて出そうとすることのなんと難しいこと!
便もね、もう四日経ってますし。ぎっくり腰を起こした当日はトイレに行きたくならないようにしようと思って極力水分を取らなかったんで。硬くなってたのも出なかった理由だと思います。
意気消沈した私に、その夜の最後、担当の看護師さんが言ってくださいました。
「〇〇さん、〇〇さんさえよければ私、掻きだしてあげます」
なんですって!
予想もしていないお言葉でした。
「ほ、ほんとですか……」
「ええ、私全然かまいませんから」
ほ、ほんとうに……。
「……お、お願いします」
「はい」
そこまでしてくださるんですか! 話ではよく聞いていましたけど。
感謝のあまり、胸がつまったような感じになりました。出していただけるんなら、こんなにありがたいことはないです!
そろそろと横向きになり、お尻をつきだします。
「いきんでください。私が指を入れたら力を抜いて」
看護師さんは一生懸命引きずり出そうとしてくださいましたが。
掻きだせたのは本当に少量だけ。
「やっぱり〇〇さん、便がすごく硬いんです。先生に言ってやわらかくなる薬だしてもらいましょう」
それでもおなかはかなりすっきりしたのです。私は感激のあまり叫びました。
「あ、ありがとうございました!」
「いえいえ、痛かったでしょう?」
「いえ! まったく! 全然!」
私は去りゆく看護師さんに何度もお礼を言いました。
これで四日目が終わりました。
四日目の晩は、少しスッキリしたおなかに大満足と大感謝で(本当にありがとうございました!)終了したのでした。
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