第55話 社内恋愛
船(フェリー)時代の話に戻ります。
今回のテーマは、社内恋愛。
で、お話したいと思います。
船でも、社内恋愛でゴールした方がいっぱいおられましたよ。
多かったのが年の差婚。
犯罪じゃねえか!?
と思うほどの夫婦が山ほど居られました。
20歳差とか、ザラ。(もちろん、年上が男性で年下が女性ですよ)
私の部署の調理員の上司は、みんな若いヨメさんもらってる方が多かったです。(そして大体が客室乗務員さんが相手なのでルックスは平均よりかなり上の女性)
なぜ、こんなことが起こるのか? その理由を考えてみました。
だいたい、高卒か専門学校卒で入社するピチピチの女の子たち。(|客室乗務員(スチュワーデス)……今はアテンダントと言った方がよいのかな?)として採用されるのでルックス重視で選ばれた子ばかりです)
今まで、学生で楽しくやってきたのに、キツイ社会人一年目としての洗礼をいきなり受けます。(まだ、十代なのに。うう、かわいそう。同年代の大学生なら遊び放題のときにですよ)
先輩に怒られて、船酔いもきつくて、家にも帰れないし気が休まる時がない。うう、あたしダメかもしれない、ちっとも成長できない、つらい……! と。倉庫の中でシクシク泣いたりしているときに、通りかかったおじさんが優しく慰めてくれたら。
いや、コロリ、といってしまうでしょう。どんなに年上のオジサンであれ。
そして、そのままその相手を人生のパートナーとして選択してしまうのです。(というか、既成事実をつくらせられ、授かり婚というパターンが多い)
外(陸の世界)には、もっと若くて素敵な男性がいっぱいいるかもしれないのに! (いるでしょう、そりゃ。容姿レベルが高い女の子たちなんだから、レベルが高い男性をゲットできるはずなのに! 船の外の世界を知らないがゆえに!)
なんだか、ふびんだと私は思ってしまうのですが、でもそれが船を最初の職場に選んでしまった女の子たちの運命なのですね。あきらめませんとね。(結婚退職してからやっと外の世界を知り、後悔してる女の子……いるんじゃないですかね。いえ、私も主人しか知らずに終わってしまったので似たようなものですが)
というわけでして、男性にとっては夢のような職場ではないかと思うのです。
毎年、何もわからないピチピチした美少女たちが入社してくるんですぜ!
そしてですね。海の世界では、陸の世界との二重生活を平然と楽しんでいる人、多かった気がします。(男女とも)
海(乗船中)と陸(下船中)の生活は、まったく別、と割り切ってですね。(お、大人思考? まあ、ばれないでしょうからね)
まあ、これも船に男女の乗組員が多くいるフェリーのような特殊なパターンですよ。
主人のような貨物船は男所帯ですから、そんな艶事とは無縁。(でも、その状態でたまに女性乗組員が一人、とか加わったりすると、そりゃあ、その女性は引っ張りだこになります。そして、その女性も船だと他に娯楽がなくヒマなので割と簡単に相手に応じる場合が多い……とよく聞きます)
どうですか。
海の世界は、陸に比べるとわりと過激でございましょう。
で・す・が。
私のいた部署の調理場はそんな世界とは無縁で。
上司は既婚者ばかりのかなりオジサン(もちろん、若いスッチーを嫁さんとして手に入れた)でしたし、まあ、私たち調理員の採用基準がルックスより体力がありそうかどうか、でしたんで。
はい、あきらかにそのような華やかな世界とは分断されておりました。
これは客室乗務員である女性の部屋はそういうエリアとして他の乗組員区画からは隔離されておりましたたのに対し、わたしたち調理員の女性は関係なくオジサン部屋区画に当然のように放り込まれておったことからも分かります。(そう考えると、ちょっとショック)
上司も申しておりました。
「この部署は安全なんだぞ。ヘンなことをしようとしてもできない。みんなが一斉に、同じ場所で仕事を始めて同じ時間に終わるからな」
と。
「でも、あっち(客室乗務員)なんかは、シフト時間がそれぞれバラバラだし、だれがどこにいるかなんて把握できない。たとえば、『部屋(客室)の点検に行ってきまーす』て、スチュワードとスチュワーデスが空き部屋の客室のカギ持ってその部屋にしけこんでたとしても誰にも分からないだろう?」
な・る・ほ・ど。
それは。
ものすごくワクワクするほど楽しそうで背徳的で盛り上がりそうなシチュエーションですね! (想像するだけでクラクラしちゃいます)
いやいや、上司の言葉どおり、そんな方々が実際いらっしゃったのか、いなかったのか、真偽は不明ですが。
(私には縁がありませんでしたが)そんな華やかで淫靡な海の世界に私は数年間、確かにいたわけなんですねえ。不思議です。(笑)
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