第27話 保育所事情1

 横浜で保育所に入るのは大変でした。


 以前、横浜市は待機児童ゼロを達成したとなっていましたが、あれにはビックリしました。ニュースで流れたのを見たとき、私は目玉が落ちそうになりました。


 ええ〜、ホントに?!

 本当にそうなのでしょうか?今でも疑っております。


 とはいえ、横浜にいた時、私の長男はひとつめの保育所はすぐに入れました。0歳児から入所したからです。

 認可ではなく、認定保育所でしたが、この保育所がとんでもなく素晴らしかった!

 保育料は、横浜市の補助を受け、認可と一緒。でも、質が特上でした。

 場所は駅から一分。マンションから通学の丁度途中にあります。

 持ち物は、手ブラでOK! あえていうならスタイだけ!

 本当です!


 お昼寝用の布団はレンタル。オムツ、ミルク、哺乳瓶は、すべて保育所持ちです。処分も保育所がしてくださいます。

 そして、朝、預けるときに子供を保育所の服に着替えさせます。(この服は保育所が毎日洗濯してくださるんです)夕方、先生が服を着せ替えてくれます。

 だから、持ち服が汚れない! 量も少なくていいから、買わなくてよい!

 なんて、素晴らしいんでしょう。合理的!

 給食は、手作りの非常に手の込んだもの。

 私だって食べたいくらいでした。

 そして、何よりも先生の数が多い!

 子供一人に対し、先生が一人、もしくは二人の時も!


 どうやって、採算とられてたのでしょう?


 こんなラクな保育所を一発目に行ってしまったもので、二つ目の保育所は大変でございました。

 え、こんなに、荷物持っていかなきゃいけないんや……と。茫然。

 それが当たり前なんですけどね。


 大変だったのは、二つ目の保育所探し。

 専門学校卒後、就職する先は土曜日も通常勤務。ひとつ目の保育所は土曜日は預かってくれませんでしたので、転所しなければなりません。

 これが、なかなかないんです!

 土曜日に平日と同じような時間まで預かってくれる保育所が!

 ふざけちゃいけませんよ。

 サービス業、自営業の家庭の存在は無視ですか! 公務員、会社員の家庭だけだと思うなよ、てんですよね。

 土曜日は15時、もしくは16時までが関の山。

 なんだ、そのビミョーな時間は。そんなシフト体制の職場なんかあるのでしょうか。

 でも、土曜日も預かってくださる保育所の先生。ありがたいんですよ。ありがとうございます、ほんとに!

 二つだけ、土曜日も遅くまで預かってくださる保育所がありました。

 一つは場所が遠い。

 そして、もうひとつは……空き状況、ゼロ枠、でした(笑)


 うわお!

 どうする? どうしよう?ーー


 ーーこの結果は次回に持ち越すことにしまして、私が当時、気になった保育所の話をして終わりたいと思います。

 この保育所は、住んでたマンションから一番近い。ですが、残念。土曜日は15時までしか預かってくれませんので、候補からは外れました。

 この保育所、何が気になったかと申しますと。


 ……定員割れしてたんです。


 ……え?

 ですよね。

 横浜市の中でも超激戦区に住んでいました。

 それなのに、定員割れ?

 保育所がない! て、みんながひいひい言ってる当時に……定員割れ?

 ホントに園児募集中のチラシが常に貼ってある!


 何故なのか?

 疑問に思っておりましたら、答えは行きつけの床屋さんのマスターに教えていただきました。

 この床屋さん、京急沿線にあり、窓から京急電車が見えます。電車好きの子供が電車にうっとりしている間に、チョキチョキ、という寸法です。

 主人、息子、ついでに私もお世話になってました。すきバサミを使わない、丁寧、上手! という素晴らしい技術力のマスターでしたから。年齢は私より五歳くらい上?奥様が私と同じ年。近所の有益な情報は、全てこのマスターから仕入れておりました。

 このマスター、二人のお子様がおられまして、別々の保育所に通われておりました。上のお子様の方が、例の気になる保育所に通園中!

 早速、聞いてみましたら、こういう訳でした。


 超、スパルタ教育、とのこと。


 園児に対して例をあげますと、ご飯が時間以内に食べられなかったり、嫌いなものを残すようなことがあれば、廊下に出して正座させ食べさせる! (おお!)


 親に対しても割とキビシイ。

 使うスモッグ、袋、名前(書くのはなし、刺繍か縫い付けで)は細かく形、大きさが指定されており、必ず手作りで!

 預けるときは、子供が準備を終えるまで見守り、連絡帳はその日のページを開いて、先生の机へ。


 躾はしっかりとやってくださるので、とてもありがたいとのこと。

 お子様は、入園して一週間でオムツが外れたとか。(すごい!)


『あそこはね、外遊びをしないんですよ』


 マスターは苦笑い。


『何してるかというとね、ずっと運動会の練習してるんです』


 なんと!

 十月の運動会に向けて、四月から毎日ひたすら運動会の練習!


『本番はかなりクオリティ高いですよ』


 軍隊並みの仕上がりだとか。


『まあ、だから、こっちも感動しますよ』


 そりゃ、そうでしょう! 半年間も練習してたら。

 なるほど。定員割れの原因は、そういう理由でしたか。


『反対にね。もう一人の子が行ってる保育所なんですが』


 正反対の教育方針。

 自由さがウリの保育園です。


『運動会の練習、しないんです』


 ぶっつけ本番! なるようになれ!


『まあ、だから、みんな自由ですよ。ゴールに向かって走らないし。先生も自由な感じで』


 そりゃ、また、すごいですね。


『こんなんでいいのか、と少し思いましたけどね』


 まあ、どっちもどっちですね、とマスターは苦笑されてました。


 うーん、世にはいろんな保育所があるものなんですねえ。

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