第14話 遊ぶ人

『男は若いときに遊んでおいた方がいい。年取ってから、遊びに目覚めると歯止めがきかなくなるから』


船で勤務していたとき、上司が何度もそう言っていました。


若くてまだお金を持っていないときに、風俗等で遊んでおいた方がいい。4、50になってお金を持っているときに遊びにハマるととめどなくお金を使ってしまって大変だから。一番、子供にお金がかかる時期なのに。


と、いうことです。

実際、私は何人かそういう方を目の当たりにしました。


ですので、全国にたくさんおられるであろう誠実で風俗なんかに近寄ったこともなく、日々仕事に励み、堅実に貯金をしていらっしゃる若い男性の方々。

申し訳ありません。

私の偏った頭の中では、


若いときに遊んでいる男性 → 将来安全   

若いときに遊んだことのない真面目な男性 → 将来危険


という大変失礼な図式が存在しております。


こういう偏見が、私の書いている「SKY WORLD」という作品の主人公キースが真面目でカタい性格であるのにもかかわらず、わりと女に手が早いとか、女性の誘いにあっさりと乗っかる、という部分に出ていると思います。(と、言い訳と宣伝です。たびたび、宣伝はこれからもぶちこんでいきます)


さて、船乗りの男性はおおいに遊ばれる人が多いですね!(中には真面目に貯金される方も、もちろんおられます)

それが以前お話したとおり、女性と違ってなかなか貯金できないという理由だと思います。

乗船中の鬱憤を下船中にぱあーっとはらしてしまうんでしょうね。


よく、女性で彼氏が風俗なんかに行ったら、すぐ別れる! 信じられない! 許せない!

という方がおられますよね。

そういう方に、付き合っている人が風俗に行ったらどうする? という質問を受けたことがありました。

私の答えは、許す(怒らない?)でした。いや、許すも何も……。

質問された方は、えーっ! という反応でしたが。


そう答えた理由といたしましては、自分が男だったら、絶対に行くと思うからです。

だって、すっごく楽しそうなんですもん。

私が男性だったら、二十代は生活費以外のお金を全部それに使ってしまうかもな、と思ったりします。


以前、台風で船が欠航になったときのお話をします。

港に着岸していて、営業もない、というので昼から夕方までずっと休憩時間になったことがありました。

上司、先輩含めた男性のみなさんは嬉々としてどちらかに出かけられました。


……夕方、みなさんはせっけんのとてもいい匂いをさせて、出勤されました。


『女の私たちには分かんないけどさあ、あれ、すっごい楽しいんだよ。しょうがないよ』


と、A先輩がそうおっしゃったのを覚えています。

みんながみんな、ニコニコとした顔をされていたので私も、ああ、すっごく楽しかったんだろうなあ、と素直に思いました。楽しそうで、うらやましいなあ、とも。


……こういう、休憩時間に全員で風俗に行って、せっけんのにおいをさせて出勤する職場、というのも陸上の会社ではなかなかないと思われますが。


さて、職場の先輩にE先輩という男性の先輩がおられました。

この先輩、下船中は生活費以外のお金をすべてそれに使っておられました。

船で働いているからそういう生活ができたのでしょうね。

船にいる間は、まったくお金がかからずに生活できますからね。


当然、20代後半になっても、貯金はゼロ!


心配した上司が夜、お酒の席でE先輩に説き伏せていたことがありました。


「今はいいと思うかもしれないけどな、お前、このままじゃ将来、絶対後悔するぞ」


「いいえ」


E先輩は答えました。


「俺は絶対、一生後悔しません!」


……言い切った!


それを聞いていた私はかっこいいとは思いませんでしたが、なんといいますか、ここまでくると清々しいというか、潔くて男らしいな、と少し感動しました。


あれから数年後。

現在、E先輩がぶれずにあのままの生活を続けてくれていることをちょっぴり期待しています。






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