声の在り処
こまたろう
第1話 誘い
めんどくせえ。
起きるのもめんどくせえ。飯を食うのもめんどくせえ。何もやる気がしねえ。
とにかくだるいんだってマジで。
そうやっていつものように起きた俺は、歯を磨くわけでもなければ服を着替えるわけでもなく日課のスマホチェックの作業に入った。
メールの受信件数なんてのはどうでもいい。むしろ何件もきてたら逆に目障りだ。
そんなこと思いながら画面に目をやると上司からいつもの「おはよう」メールが届いていた。
めんどくせえ。そもそも何で毎日バカみたいに同じ内容送ってくるんだよまじで。
上司からのメールは「おはよう」のタイトルが絶対つけられていて、その日の仕事の内容がこと細かく書かれている。
こいつからのメールのおかげで俺のメールボックスは「おはよう」だらけだ。
そもそもメールを送ってくる意味あるのか?俺お前のとこの会社に入って3年目だぜ?
子供じゃあるまいしよ。
毎朝同じ気持ちで起きなきゃならん俺の気持ちも考えろっての。
めんどくせえなマジでよ。
そうやって思いながらスマホチェックを終えようとした時見覚えのない通知に目がいく。
なんだこれ?
見てみると今流行りのSNSのアプリの通知が1件きていた。
こんなもんとったっけ?ああそういや今宮のやつが勝手に入れてやがったな。女探せるっすよとか言って。めんどくせえな。あいつも。
別に俺は女もいらねえし、関わりも持ちたくねえんだって。うっとうしいだけなんだからよ。
だけどこの通知がどうしても気になったていうか目障りだった俺はこのアプリを開いた。通知を消すために。
そしたら1件のメッセージが届いていた。
誰だ?こいつ。
送り主の名前に覚えはなかったが、こいつの顔は覚えている。
大学の時に行動心理学の授業で一緒だった奴だ。て言っても全然絡んだことはない。
むしろいつも暗くて何考えてるかわかんない奴だったから避けてた。
俺は人と関わるのがとにかく面倒くさいって思うタイプの人間だ。だからって引きこもってアニメとか一日中見てるようなタイプの人間でもない。
ゲームもそこそこしかしない。しかもやるゲームはいつも決まってサッカーのゲームだけだ。
こだわりもない。というか何にもこだわらない。全部適当に済ませてきた。
俺にとっちゃ人付き合いなんてのも興味のない他のものたちと同列。どうでもいいんだ。
ただ淡々と時間が流れて適当に過ごして人生終えればそれでいい。
親兄弟もめんどくせえし関わってくんなってマジで思ってる。
けど、俺はそんな自分が嫌いだ。どうしようもなく。
今言ったことが嫌いなんじゃなくてさ、こういうのを隠してる自分が嫌いなわけ。
表に出すべき感情じゃないって頭のどこかにインプットされてしまってて俺は本来の自分を全くだせていない。
これはある意味洗脳だと思ってる。社会の。何が正しいかとか何が間違ってるのかっていうのはこの社会が勝手に決めたルールだと思ってる。それにいつの間にか俺らは洗脳されてるんだ。
だからめんどくせえんだ、全部。それを隠すことが「正」みたいになってるからろくなもんじゃねえ。
そうやって思って生きてるんだ俺は。
でどうでもいい俺の話は置いといてそいつからのメッセージなんだけど、明日の夜大学の友人集めて飲み会するからお前も来いって内容だった。
普通ならここでスルーするんだけど本文の最後に載ってる参加者の中に当時気になっていた女の名前があったからそれに反応してしまった。
この女は何かと世話焼きな奴だった。講義に出るのがめんどくさくてタバコ吸ってたら注意しにきて俺の腕を引っ張ってって無理やり教室に連れていくみたいなこともなんどもされたし、別に食いたくねえから飯食ってなかっただけなのに勝手に弁当作ってきたりとか。
そんなことが何回もあったもんだから俺は次第に彼女のことが気になって行ったんだ。
先に言っとくが俺は恋愛だって普通にする。けどすぐめんどくさくなっちまうんだ。なぜかはさっき話した。洗脳のせいだ。
けど、別に彼女とは何の進展もないままお互い卒業した。連絡先も聞いてねえし今どこで何をしてるかわからなかったけどこの薄暗メガネ君のおかげでその当時の記憶が鮮明に蘇ってきてすげえ興味がわいた。だから俺は行くことにしたんだ。そのめんどくせえ飲み会とやらに。
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