サミット制圧五分前!5-4
今回のサミット会場とされていたのは、大きな湖に隣接している風光明媚な避暑地であった。
そこから周囲数キロに渡って、都市や街と言えるだけの人口密集地は存在していない。
もちろん、整備された交通路もまばらだ。
確かに一般の生活区としては不便な地域であったろう。
しかし、こうした国際会議を開催するにあたっては、まず格好の場所だったとも言える。
ある程度市街より孤立した僻地であるなら、ひとの流入も監視しやすく、それが直接警備のしやすさに結びつくからであった。
雷牙の操るオウリュウが辿り着いたのは、その隔離されたエリアの外縁からさらに数キロ離れた小高い丘の陰だった。
現地から直接視認されないよう極低空を飛来してきた翔龍機神は、その垂直離着陸能力をフルに活用して、
いかに地形自体が平坦とはいえ、草生す原野を横断しながらの行程は、嫌が応にも時間の浪費を彼らに強いた。
しかも女性であるシーラの足をともなってのことなのだから、それはもうなおさらのことだ。
ゆえにふたりがサミット会場を目視できる位置に到達したのは、出発時から数えて二時間以上が経過したおりのことだった。
残された時間は、あと一時間にも満たない──…
「カーネル=ザンコックが言っていた時間まであとわずかです。急ぎましょう」
「ええ」
腰を屈め、声を潜めてそう告げた雷牙は、やや疲労気味のシーラを従えるようにして歩を進める。
幸いにしてこの時期、生い茂る雑草の背はそれなりに高く、ふたりの姿を監視の目から隠し通すのに大きな役割を果たしていた。
途中、哨兵として警戒に当たっていたザッコスを数名、それぞれ不意打ちによってねじ伏せつつ、宇宙刑事と女子校生のふたり組はサミットのメイン会場として使用されている建物の入り口へと接近した。
もちろんそれは、メインゲートのほうではない。
資材の搬入などに使われている裏口のほうだ。
その場で警備に付いていたのは二名のザッコスどもだった。
どちらも銃を手にしていない。
しかしその手には、代わりに電撃ロッドらしき武器が力強く握られていた。
隙を見て陰から飛び出した雷牙が、手刀の一発でその片方を眠らせた。
鮮やかなまでの一撃だった。
襲撃に気付いたもう一方が慌てて電撃ロッドを振り上げる。
だが、宇宙刑事のバックキックがそれより早くその鳩尾付近にめり込んだ。
強力無比な打撃を食らい、どっと音を立てて崩れ落ちるザッコス。
それを尻目に、雷牙とシーラは扉を開けて建物の中へと侵入する。
「首脳陣が捕らわれているのはどこだ?」
「雷牙! あれッ!」
広々とした屋内を進むふたりがとある一室の存在に気付いたのは、それからしばらくしてのことだった。
おそらくはホールの入り口か何かなのだろう。
両開きの豪奢な扉が、廊下と室内とを見事なまでに分け隔てている。
通路の角からそっと様子をうかがうと、扉の前にはやはり二名のザッコスどもが身動きひとつせず立っていた。
まるで衛兵のごとくだ。
それらが背にした扉の向こうに、彼らが守ろうとしている何かがある。
それだけは間違いないことのように思われた。
「あそこか」
そのことを察した雷牙の反応は極めて迅速だった。
疾風のごとく長い廊下を駆け抜けた宇宙刑事が、怪人どもへと襲いかかる。
「たァッ!!」
初撃は跳び蹴り、続く二撃目は回し蹴りだった。
完全無欠の奇襲を受けた全身タイツの戦闘員は、自分の身に何が起きたのかもわからないまま、ほとんど同時に昏倒する。
当然のことながら、仲間に連絡を入れる暇など与えられなかった。
駆けてくるシーラの到着を待たずして、雷牙は扉の把手に手を掛けた。
新手の敵が来ないことを確認したのち、それを両手で押し開ける。
室内に閉じ込められていたのは、怯えたように座り込む数十名の男女であった。
各国首脳陣たちと一緒に捕らえられた報道陣やスタッフの面々である。
各々拘束こそされていないものの、その表情には明らかな不安と憔悴の色とが張り付いていた。
何事が起こったのかと一斉に目線を向けてくる彼らに対し、轟雷牙は開口一番、大きな声で言い放った。
「皆さん、もう大丈夫です! 奴らが気付く前に、急いでここから脱出しましょう!」
「君は、いったい何者かね?」
報道関係者のひとりと思われる西洋人男性が、震える声でそう尋ねた。
それももっともな話であろう。
彼がいま目の当たりにしている若者は、どこをどうやってもテロリスト制圧のため突入してきた特殊部隊の一員などには見えなかったからだ。
黒縁眼鏡にシンプルな背広というその出で立ちは、銃と戦闘服で身を固めた精鋭たちの姿とはあまりにかけ離れすぎている。
それは彼ら市井の一般人にとり、疑いの目を向けるにあたり十分以上の理由となった。
だが、雷牙はそんな空気をいっさい読もうとしなかった。
読めなかったのではない。
読まなかったのだ。
胸を張りつつ彼は名乗った。
「宇宙刑事警察機構から来た轟雷牙です!」
「宇宙刑事警察機構──…?」
「細かい話はあとです。各国の首脳たちがどこに捕らわれているのか、それをご存じではありませんか?」
聞かされた名乗りをさっぱり理解できずにいる一同に対し、青年は問答無用にたたみ込む。
勢いに押された彼らの一部が「あ……ああ」と何度か頷いてから口を開いた。
「あのカーネル=ザンコックとやらが、最上階のフロアに連れて行ったはずだ」
「ありがとうございます!」
次の瞬間、回答を受け取った宇宙刑事が素早く行動を開始した。
シーラもまた、そんな雷牙のあとを追う。
解放された面々の視界内で、長く美しい金髪がさっと鮮やかに空を切った。
「なんだったんだ、彼らは」
外国人記者のひとりが、唖然としたままそう呟いた。
そしてそれは、この場にいる者たちすべての共通認識に近かった。
◆◆◆
「ふふふ……そろそろ決心は付いたかね」
ステージ上に集められた先進国首脳陣に向け、カーネル=ザンコックはサディスティックに詰め寄った。
その右手に握られた硬質の鞭が左の掌へと打ち当てられ、メトロノームのように鋭い衝突音を刻み続けている。
居丈高に彼は言った。
「諸君らに残された時間はあとわずか。いい加減、進むべき道を定めねばならない頃合いだ。諸君ら一同、まがりなりにも一国の長であるのだろう? ならば、何も決めないままただ状況に流されるという選択がどれほど愚かで無責任な行為なのかは、十分に認識できているはずだ」
いま首脳陣らが集められているこの部屋は、建物の最上階に設けられた大型の多目的ホールであった。
明るい色のカーペットを敷き詰められたその部屋には、入り口はひとつで窓はない。
今回のサミットにおいて、この部屋は公式のディナーパーティーに用いられることが決まっていた。
最奥には、段差のあるステージが用意されている。
いうまでもなくそれは、メディア向けの写真撮影や関係者による簡単な挨拶等に使用する場所だ。
そのステージの上で虜囚の辱めを受けている各国の首脳陣であるが、その目からはまだ意志の力が失われていなかった。
明確な根拠があったわけではなかろう。
しかしながら、それでも彼らは、自分の命運が尽きたなどとはこれぽっちも考えてなかった。
だが、そんな強靱な精神力もいまや徐々に崩れ落ちようとしていた。
閉鎖された空間で孤立無援。
異様な存在感を湛える
救援部隊はまだか。
救援部隊はまだか。
この時、首脳陣らの心中に木霊していたのは、ただその言葉だけであった。
希望、と言い換えてもかまわない。
彼らは信頼できる軍事力が自分たちの身を救出してくれることのみを心の支えとして、必死になってリーダーとしての自我を保っていた。
それが国家代表としての矜恃だった。
自尊心だった。
それが綻びを見せ始めたのは、タイムリミットが残り十分を切った、まさにそんなおりでのことであった。
「やはり、こんな重要な国際会議を日本などで行うべきではなかったのだ!」
たまらず愚痴をこぼしたのは、中華人民共和国の国家主席・
突如としていきり立った彼は、まるですべての責任がその舌鋒の先にあるかのごとく、日本国首相・矢部新蔵氏に噛み付いた。
「日本国としては、今回の失態についてどう責任を果たすつもりなのだ? 我々国家代表の安全を確保できず、それでも一人前の国家のつもりなのか? しょせんは戦犯を詣でる野蛮人どもの集まりよ。まさか、このイベントもおまえたち日本人の企んだ自作自演なのではあるまいな!」
「見苦しいですぞ、国家主席殿」
興奮した劉氏の激情を、矢部氏はさらりと受け流した。
「私を責めるお暇があるなら、少しはその脳細胞を活用して、この状況を打破する策を考えてみてはいかがかね?」
「なんだと、貴様!」
思わず矢部氏に掴みかかろうとする劉氏を、他の首脳陣たちが慌てて止める。
「仲間割れとは、なんともまあ醜きものよのう」
その様子を黙って眺めていたカーネル=ザンコックが、口元を緩ませ嘲笑を浮かべた。
「残り時間五分。では諸君。答えを聞かせてもらおうではないか」
首脳陣たちの顔色が二種類に分かれた。
右と左。
白と黒。
どういう風に分類すべきかは判然としないが、それでも確実に彼らはふたつの違った方向へとその意志を固めた。
「カ、カーネル・ザンコックとやらに尋ねたい」
最初に声を上げたのは、中国国家主席の劉氏であった。
ぶるぶると小刻みに震える唇でもって彼は言葉を絞り出す。
「もしそちらの意向を我が方が受け入れた場合、この私自身の地位というものはそのまま留保されるのだろうか? できればここで、その確約をいただきたい」
それは一般的な恥の概念をすら超越した、圧倒的な保身の態度にほかならなかった。
もしこの台詞がすべて口腔より放たれてしまったあとであれば、劉氏の政治家としての立場は地に堕ち、彼の治める国民たちからは「売国奴!」という罵倒の叫びで迎えられたことだろう。
皮肉なことに、そんな劉氏の未来を救ったのは日本国首相・矢部氏の放った決然としたひと言であった。
隣国代表の発言を途中から遮るように、彼は眼前の威丈夫に向かっておのれの意志を言い放った。
「我々は理不尽な暴力などに屈しない」
彼は言った。
「我々は国家の代表であるが、その権力はあくまでも国民より委託されたものだ。断じて私有財産と同じように扱っていいわけがない。だからこそ、我々は君たちのような暴力集団との取引には応じない。我々は専制君主ではないのだ。そのような脅迫に応じる権限を、我々は国民たちから委ねられてなどいない!」
「ほう」
それを聞いたザンコックは、感心したような声を上げた。
「その決断が自らの死を招いたとしてもか?」
「招いたとしても、だ」
「ならば死ぬがいい」
異星からの威丈夫が、右手を高々と頭上に掲げた。
配下のザッコスどもに決定的な合図を送ったのだ。
首脳陣を取り囲んでいた黒尽くめの怪人たち。
その全員が足並みをそろえ前に出る。
無機質な感情が、冷たい風となって各国代表に吹き付けた。
怪人たちの表情は仮面の下ゆえうかがい知ること適わぬが、それが友好的なものでないことぐらいは、たとえ幼子であっても認識し得たことだろう。
だが、矢部氏を始めとする首脳陣の大半は、毅然とした態度でその強圧を受け止めた。
揺るぎない覚悟の相が、彼らの顔に浮かび上がって凝固する。
その色合いは、先ほどとある人物が形にしようとした保身の情とはまったく異質なそれだった。
あるいは自己犠牲。
あるいは利他的行為。
いや、そういった短い言葉でその行動を言い表すのは不適切かもしれない。
あえて言うなれば──そう、あえて言うなれば彼らは、自らの安全と引き替えにより大切なほかの何かを守り抜こうとする決断を、この時、おのれの意志でもって下していたのである。
ザッコスの集団が首脳陣に迫った。
一斉に電撃ロッドが構えられる。
その整然とした動きからは、憐憫も慈悲も、それらに類するあらゆる種別の温かみも、およそ何ひとつ感じ取れなかった。
口元を引き締め、一部を除く首脳たちは両のまぶたを静かに閉じた。
確実に訪れるであろう死の予感が、彼らの心中を急速に満たしていく。
まさにその瞬間のことだった!
「そこまでだッ!!!」
バタン、と大きな音を立てて扉が開き、裂帛の気合いがフロアの空気を両断した。
大胆不敵な乱入者が、改めてこの舞台への登壇を熱望したのだ!
扉の向こうに姿を現したのは、黒縁眼鏡をかけ地味な背広を身に着けたたったひとりの若者だった。
首脳たちが待ち望んでいたような武装した兵士の群れなどではない。
しかも彼の身体付きからは、いわゆる武人の無骨さのような印象はいっさい放たれてなどいなかった。
確かに長身痩躯の持ち主ではあったが、純粋に見た目だけを捉えるならどこにでもいるサラリーマンたちと大差はない。
刹那の希望に輝いた首脳陣の双眸から、瞬く間にして光が失せた。
だがいまこの空間を暴力で支配している
肩越しに振り向いた威丈夫の顔付きが、一瞬にして驚愕のそれへと変化する。
「き……貴様はッ!」
両目を見開きザンコックは叫んだ。
「貴様はッ、轟雷牙ァァッ!!」
その驚声が終わるか終わらぬかのうちに、飛び込んできた青年の左ストレートが彼の顔面を直撃した。
「ぶるあァァッ!」という奇声を上げて、威丈夫は身体ごと後方へ吹っ飛ばされる。
たちまちのうちに、背広の青年と黒尽くめの怪人どもとの間に白兵戦が勃発した。
いったい何が起きたというのだ?
突如生じた状況変化を各国首脳が認識するよりはるかに早く、その若者は群がり寄る黒衣の怪人を立て続けに蹴散らしていった。
長い手足がひと振りされるたび、つい数時間前、選りすぐりのガードマンたちを文字どおり瞬殺した戦闘員どもが、ばたばたと地に伏し沈黙を強いられていく。
包囲の輪に大穴が開いたのは、それから数秒後のことだった。
ずたずたに陣形を崩されたザッコスどもが、じわりと数歩後退った。
転倒したカーネル=ザンコックを中心に、密度の薄い円陣を敷く。
彼らの中に、反撃してくるような素振りはまったく見られなかった。
この若者の放つ存在感が、一時的にしろ怪人どもの戦意を圧倒したのだ。
そうした敵の挙動を見届けたたのち、青年は首脳らに向け即時脱出を促した。
「いまのうちです! さあ、急いで!」
「君はいったい何者だね!?」
矢部氏の口が、咄嗟にそんな質問を飛ばした。
確かに場違いな反応ではあろうが、その心理だけは理解できる。
だからなのだろうか。
敵と首脳陣との間に壁となって身を置きながら、青年は莫迦正直にそれに答えた。
「僕の名は轟雷牙。宇宙刑事警察機構よりこの惑星に遣わされた宇宙刑事です!」
「宇宙……刑事?」
矢部氏の表情に隠しきれない苦笑いが浮かんだ。
その回答を、一種のジョークだと捉えたがゆえの反応だった。
思わず「何を莫迦なことを──」と噴飯しそうになる。
だが、寸前のところで彼はその衝動に耐えた。
新しい登場人物の出現が、彼を含めた首脳陣全員におのれの立場というものを再認識させたからだった。
「何やってんのよ、雷牙ッ!」
煌めく金髪をなびかせ駆け込んできたその者は、見目麗しいひとりの少女だった。
飾り気のないセーラー服という、典型的な学生の出で立ちをしている。
正体不明の武装集団と対峙しているこの状況を考えれば、その存在は激しく現実離れしたものだ。
だがそんな彼女の発言は、それとは逆の方向性をもって聞く者すべての耳朶を打った。
「いつまでもこんなところでもたもたしてたら、敵の新手が来ちゃうわよッ!」
「わかってます」
雷牙と名乗った青年は、軽く頷きそれに応えた。
「ではシーラさん。このひとたちをひとまず安全なところまで案内してあげてください。後陣は、この僕が責任もって守ります!」
「了解ッ!」
美声を張り上げ、シーラと呼ばれたその少女は自ら首脳たちを先導する。
大した胆力の持ち主だ。
自身の率いる者たちが各国の権力者であることを知っているはずなのに、その態度からはおよそ遠慮というものを見て取ることができなかった。
「ええいッ! 何をしておるかッ! 追えいッッ!」
顔の半分を手で押さえながら、カーネル=ザンコックは部下たちに命じた。
怒りに全身を震わせ、立ち上がりざま右手の鞭をあたり構わず叩き付ける。
彼は言った。
「もはや生かしておく必要もない! 我らブンドールに従わぬ者がどのような運命を辿るものか、その身をもって教育してやるがいいッ!」
美少女を先頭に駆け足で廊下を行く各国の首脳たち。
ブンドール帝国の戦闘員・黒衣の怪人ザッコスどもは、「イーッ!」っという奇声を放ちながら次々とその隊列へと襲いかかる。
だがしかし、彼らの殿を勤める宇宙刑事・轟雷牙が、その追撃を完全に阻止していた。
舞台が狭い廊下とあっては、その強固な防壁を迂回しようにも手段がない。
目の前で折り重なって打ち倒されるふがいない部下の様子を現認させられ、指揮官たるカーネル=ザンコックは音を立てて歯軋りした。
「なんというざまだ!」
蛇のような血管をこめかみに脈打たせつつ威丈夫は猛った。
激情のおもむくまま、ついに切り札の投入を決断する。
「機界獣アサマラムよ! 出でませいッ!!!」
怒濤の叫びが放たれると同時に、雷牙の足元の床上で光の筋が網の目のように走り抜けた。
キンッ、という耳障りな金属音が響き、彼のもといたその場所が一気に階下へ崩れ落ちる。
直後、見た目カマキリに似た緑色の巨獣がそれと入れ違いに下方から飛び出してきた。
機界獣だ!
身軽な動作で青年の眼前に着地したその魔獣は、全体が鋭い刃と化した両腕を誇示するように振り回す。
「宇宙刑事よ。これが新たな機界獣アサマラムだ!」
カーネル=ザンコックが自慢げに吼えた。
「その両腕に装備された熱伝導ブレードは、厚さ数メートルの特殊鋼であっても薄紙のごとく両断する! 今度はいつぞやのようにはいかぬぞ。観念して命乞いの準備でもするがいい!」
ぶぉん、と不気味な音を立ててアサマラムの熱伝導ブレードが振り下ろされた。
素早くバックジャンプした雷牙は、それをすんでで回避する。
「雷牙ッ!」
振り向きざまにシーラが叫んだ。
首脳陣もまた、この世の者とは思えない怪物の姿を直視して、かっと両目を見開かせる。
「あれはなんだ!?」
「異星人の生物兵器か!?」
「あんなものが……」
「なんということだ……」
「ジーザス!」
「シーラさんッ!」
立ちすくむ政治家たちを尻目に、轟雷牙はシーラに告げた。
「ここは僕に任せて、あなたは先に行ってください。そして、もしいざという時が起きたら──その時は、わかりますね?」
「わかったわ」
青年が何を言いたいのかを即座に察し、シーラは短く返事した。
「でも、ちゃんとわたしのところに帰ってくるのよッ! もし帰ってこなかったりしたら、その時は本気で承知しないんだからねッ! 軽く三日は晩ご飯抜きなんだからねッ!」
叩き付けるようにそう言うと、美少女はふたたび前に走り出した。
自分よりはるかに年長い政治家たちを厳しく叱咤激励しつつ、ばたばたと目の前の階段を駆け下りていく。
機界獣アサマラムと生き残りのザッコスどもが、あわててそのあとを追おうとした。
だが、仁王立ちする青年が彼らの行く手に立ちはだかる。
向かい合う異形の敵を睨み付け、若き宇宙刑事は気合いとともに咆吼した。曲げた左腕を突き出しつつ彼は叫ぶ!
「龍神変ッッッ!」
雷牙の額中央、その一点が目映いばかりの光を放った!
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