消えないで、狂愛
麻倉 ミツル
エピローグ―想い人を待つとき―
風に流されて空に舞う桜の花弁はどこか儚い。場所が場所なだけに尚更そう思える。
自分の名前が刻まれた墓の真上でふわふわと浮遊している私に影はない。舞い散る桜の花びらを掴もうとも、この透けた掌では到底無理な話だ。橘 彩花は数日前に自殺を図って、こうして幽霊になった。
私が何故、まだこの世に留まっているのか。
それはたった一つの未練。私にはこの世で唯一の想い人がいる。
私が、世界で一番大好きなひと。
私を、世界で一番愛してくれる人。
いますぐ逢いに行きたいけれど、ここから何故か離れることができない。それでも心配の必要はなかった。もし私が死んで幽霊になっても、あの人はきっと、私を見付けてくれる。そう約束を交わしたのだから。
私は此処にいます。
私をまた抱きしめてほしい。
一人は、とても寂しい。
だから早く逢いに来て、先生。
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