一番勝負

~赤虎 VS ヒーロー女子高生~

落し物 拾って交番届けましょう①



――リメタイル。


 それはあくひろ学園に伝わる宝のひとつ。


 リメタイルは古来より強大な力を持つ者が受け継いできた。一部ではこれを持っているからこそ学園で力を手にする事ができるとみる者もいる。


 故に、これを持つことは強者の象徴であり証となる。学園の歴史の中で、これのために争いを起こしてきた組織は数多くあった。


 あるときは正義と悪がぶつかり正義が勝利を収め、またあるときは悪が正義を退ける。悪同士で衝突することもあれば、それを手に入れた組織で内部分裂が起き――その度にリメタイルは戦火に紛れ多くの者の手に渡ってきた。


 そしてここでもまた、リメタイルを巡る争いの渦が――……



◇◇◇



 3階、1年“は組”の教室にたった二人、男子が残っていた。いずれも窓に背を向け、あと数分で沈むであろう夕刻の日差しをその体に受けている。

 人はこれを光と闇、人と妖しが行き交う逢魔が時という。


「……そのリメタイルが今、この俺さまの手の内にあるのだ」


 今にも消え隠れそうな陽光の燐片を照り返し鈍く光るリメタイルを、右手の指先で転がしてじっくりと眺め回しながら、話を終えたセイジは窓枠へと寄りかかった。すぐ後ろの窓から吹き込む風が短くカットされた髪を揺らす。

 ここあくひろ学園は〈ヒーロー〉と呼ばれる正義の味方と〈ギルティ〉と呼ばれる悪者のたまごが育っていく学園で、“戦闘科”“科学技術科”“守護科”と、その他“一般科”に分かれて成り立っている。

 しかし今、口の片端を引き上げて不敵に笑っている彼は、とても正義の味方には見えない。仮に何も知らない生徒に彼の顔写真でも見せれば誰もが“戦闘科の悪者”と回答することだろう。それほど彼、セイジは普段から人を睨み付けているような、不機嫌そうな表情をしている。その想像通り、彼は“戦闘科”レベル1の悪者ギルティだ。

 彼の隣に立つのは、モデルと見紛う程の美形の少年。

 着崩した制服に、左耳にだけつけられているシンプルな銀のピアス、一重切れ長の目は、彼――悠馬に一見クールな印象を持たせている。


「そんなもの一体どうやって手に入れたんだ、セイジ」


 悠馬は顔によく合った涼やかな声でセイジに尋ねた。


「・・・・・・フッ。聞いて驚け」


 小さく笑うと、セイジは人差し指を顔の前でビッ!と突き立てた。



「『集えギルティ! 連合組合』のジャンケン大会で全勝したのだ!」

「……ああ。おまえ勘と運だけはいいもんな……」


 なにやら豪華すぎる豪華賞品に多少疑問を覚えたが、そんな事よりも学園の悪者達が何でわざわざ集まってジャンケン大会をしているのかという事が悠馬には気にかかって仕方なかった。

 二人でそんな会話をしていたところに、ばたばたと廊下を駆ける足音が聞こえてきた。やがて足音の主はその場に止まる間もなく教室のドアを開け放つ。


「リーダぁ、飲み物買ってきたよ! リーダぁの好きなはちみつレモン!」


 言いつつ、らん丸はセイジに向かって缶ジュースを放り投げた。16歳男子平均身長よりもずいぶんと小さめな彼は、やはり顔もかなり幼い。不揃いに伸びた髪の毛が後ろでちょろりと結ばれ、男子とはとても思えない大きな黒い瞳は目元を深く覆う前髪にほとんど隠されている。


「おお、ご苦労」


 先程まで彼等の背中を昏く照らしていた日の光はいつの間にか立ち並ぶ木々の下へと沈んでいた。校舎を囲む道には外灯が点々と灯っている。

 投げられたはちみつレモンをセイジは危なげなく右手で捕らえる。その時爪にでも当たったのか、かつんと小さな音がした。

 その光景を見て、悠馬がこちらは緑茶缶を受け取りながらつぶやいた。


「あれ。おまえ、そっちの手にリメタイル持ってなかったっけ?」

「ん?」


その言葉にセイジが顔を上げたとき、


 

 ひるるるるるるるる。



 ちょうど、彼等の後ろにある窓の外を、缶ジュースに弾かれたリメタイルが落下していった。




「な゛あああ〜〜〜!! リメタイルがぁぁ〜〜!?」

「何やってんだお前!!」

「うああああっ」


 三人は慌てて身を乗り出すが、外はもうすっかり暗い。


「み……見えん……」


 神妙につぶやくセイジの横から二人が呆れた声を上げる。


「あたり前だ! 何階だと思ってんだここっ!」

「あ〜あ〜、落としちゃったぁ……だめだな〜リーダぁ」

「バカだよバカ」

「いっつもこうなんだから〜。どじだし」

「アホ」

「ちょっとは学習しないと」


etc、

etc…。


「ええい、やかましい!!」


 怒号と共に教室内を机や椅子が飛び交った。

 悠馬とらん丸は机と、不幸にも中に入っていた教科書・プリントが舞う中を器用に跳ね避けていく。

 教室内の机が残らずひっくり返ってしまった頃、追いかけっこは終了した。

 未だに荒く息をしつつセイジは改めて言う。


「直ちに回収しに行くぞ!『赤虎ひのえとら』、出動!」


 最終的にしっかり一発ずつげんこつを喰らった二人は、しかし元気良く答えたのだった。


『ラジャー!』


 三人ほぼ同時に、握り締めた両拳を脇から前へと突き出し大回りな動作で左胸の前に交差させる。


『変身バッジ、起動』


 声が重なり、襟元に取り付けられたバッジが強く発光した。


「個体名、〈ヒュウガ〉」


 悠馬の制服が光に包まれ、腕に吸い込まれるかのように先端から肩先まで消え去る。


「個体名、〈ヤマト〉」


 セイジの目元を深く覆い隠すように赤い仮面が現れる。


「個体名、〈カズサ〉」


 らん丸の腰に現れた光の輪が帯となって体に巻きつき、力の余波が裾をなびかせる。



 さんっ――!



 そして、三人は校舎の周りに広がる芝生の上に降り立った。


「良いか、ヒュウガ! カズサ! 必ずリメタイルを探し出すのだ!!」

『ラジャー!』


 答えて。

 周りはすっかり暗い夜の世界に入り込んでいることに気が付いた。その上サングラスレンズの仮面をつけている状態では、互いの存在さえも気配のみでしか確認できない。


「……ってか……」


 ヒュウガが腰の帯に手をかけつつぼそりと呟く。

 直後、不意の一撃がヤマトに直撃した。


「この暗闇で見つかるわけないだろーが!」



バシャァァァ!



 辺りに水飛沫が散った。


「ぐはあ! ヒュウガが反乱を……!」

「リーダぁぁ!? 一体何が……ちょっとヒュウガ何やって……!」


 真っ暗闇の中、三人は極めて無駄な時間を過ごしていくのだった。



◇◇◇



 あくひろ学園は、第一寮・第二寮、そして最近新しく建て直された女子生徒専用の第三寮で成り立つ全寮制だ。未だ男子生徒の全体数には及ばぬものの、あくひろ学園に通う女子生徒の数は年々増えてきている。この清潔的な白壁の寮も、そんな希望と夢を持って遠くからやってきた女子生徒達の為に用意されたものだ。


「アサギー、風呂空いてたよ」


 ハンドタオルを両肩に引っ掛け栗色の濡れた髪を雑に拭きながら部屋に入ってきたのは、あくひろ学園の一般科に在籍している2年生、赤石あかねだった。いささか女の子らしくない仕草に見えるが、170の長身に健康的に引き締まった体、しかも出るトコロはしっかり出ているとても魅力的な体型をしている。

 同室の友人に声を掛けたつもりだったあかねは、部屋にいるのが想像していた友人一人だけではないことに気が付いた。


「あれ。もう帰ってたの、葵」


 名前を呼ばれた彼女は肩より少し下に切りそろえてある髪をふわりとなびかせて振り返る。寮の同じ部屋で生活を共にする、いわゆるルームメイトの水戸葵である。


「ただいま、あかね。ちょうどついさっき帰って来たとこなんだけど……」

「なに、どうかしたの?」


 あかねの質問に答えたのは、やはりルームメイトの深谷アサギだった。


「葵が校舎脇の道でバッジを拾ってきたのよ」

「バッジ?」


 あかねは葵の手の中のものに視線を落とした。形は直角三角形に近い。表面には幾何学的な線が走っていて、飾りと思われる小さな突起には赤い石がはめ込まれていた。全体が金色に輝いているそれは、天井の蛍光灯の白い明かりを無機質に照り返している。


「ふ~ん、アホな奴がいるもんだねー」


 あかねのつぶやきに、葵は困ったように眉をひそめた。


「生徒の誰かのだろうし、学校に届けた方がいいかなぁと思って」

「でもそれってギルティの物な可能性もあるわけでしょ?」

「うん……」


 影あるところに光あり、とはよく言ったものだが、光があるところに必ず影が出来るというのもまた必定。

 あくひろ学園はそこら辺にある普通の学校とは違う。創立はかれこれ100年前、本来は社会に必要とされる技術者、特殊能力者達を育てる特別な学園だった。

 しかしそのうち、手に入れた能力や技術を良くない事に使おうとする連中が世間に現れるようになり、そんな奴等を成敗する正義の味方ヒーローも学園で育てられる事となった。それが今の“戦闘科”の元である。

 今ではヒーロー志望者が学園の大半を占めるようになっている。その一方で悪に憧れて入ってくる者達の数もまた、年々増えてきているのだった。


「だから、これの処置に困っているのでしょう?」


 悩む葵に代わって、とても困っているようには見えないおっとりとした口調でアサギが言う。アサギはほとんど常に微笑みを湛えている、ある意味ポーカーフェイスな少女である。


「なるほど。確かにギルティなんかにバッジを返すってゆーのも気が乗らないよなぁ」

「悪い人たちの手助けはできないわ! でも普通のバッジとも違うみたいだし、なにか特別大事なものだったら……」


 一般に使われるバッジのうち、変身バッジは白、レベルバッジは黒に色分けされていて、黒い方にはレベルに合わせた数字が填め込まれている。しかし、このような三角形のバッジはそのどちらにも似つかない。どこかの組織が何か専用の物として造った、というのが妥当な所だろうか。

 不意にアサギが顔を上げ、胸の前で小さく手を打った。


「そうだわ。このバッジ、持ち主が現れるまで葵が身につけているというのはどうかしら」

「えっ、わたしが!?」

「お、いいんじゃん? そしたらこっちが何もしないでも、向こうから勝手に見つけてくれるし! さすがアサギ」


 驚いてアサギを振り返る葵に代わり、あかねが相槌を打つ。


「そんで相手がヒーローだったらこのまま返してやって、ギルティだったら返してやらないってことでしょ!?」

「そういうことよ」


 大きく納得すると、あかねはそ~しちゃえそ~しちゃえ、と葵を急かした。


「だっだめよ! そんな事……」

「いいんだよ!」


 あまり気乗りしない様子で再びバッジに視線を落とす葵。その肩に手を置いて、あかねが言う。


「バッジなんて大事なもん落とす方が悪いんだから!」

「え~、いいのかなぁ……」


 アサギも葵の背中をぽんと叩いて笑った。


「そういうことよ」

「うぅ~~~ん……?」


 葵だけはいつまでも、首をかしげて呻っているのだった。



◇◇◇



 早朝より、雑草を掻き分ける三人の影を校内に見受けることが出来た。だからといって慈善事業で草むしりをやっているわけではない。昨晩に引き続き、『赤虎ひのえとら』総勢で紛失したリメタイルの捜索に当たっているのだ。

 見ての通り、総勢はリーダーのセイジを入れてたった三名である。組織を名乗るのもいささかおこがましいが、それ以前にこの少人数ではこの作業、全くと言っていい程はかどらなかったりする。

 部活の朝練組が登校しだした頃、最も体力も根気も持ち合わせていないらん丸が真っ先に音を上げた。


「うう〜、リーダぁ見つからないよ〜。もう三匹も変な虫触っちゃったし、やっぱり諦め……」

「たわけぇぇぇぇ!!」


 らん丸がみなまで言う前に、セイジによる飛び蹴りが彼の後頭部にヒットした。

 悶絶するらん丸の襟首が掴まれぐいと引き寄せられる。


「おぬしあれの重要さがまだ判っていないようだな。なぜあれが学園の宝と言われているのか……」


 セイジはらん丸の襟首を引っつかんだまま視線をあらぬ方向に飛ばして語り始めた。


「あれは身に付けている者の能力数値を上げることができるものだ。レベル1なら2以上に、レベル2なら3以上に、おそらく“戦闘科”に限らず“守護”能力や果ては“一般”生徒達の基礎レベルまで上げる! とにかくすごいアイテムなのだ!!」

「……でもレベルの一つや二つくらい……」

「……なんだとぅ……?」


 ぽそりと呟くらん丸をセイジが剣呑な目つきで睨み付ける。

普段からしかめっ面をしているせいか、やけに凄味の効いた視線だ。

見かねた悠馬が近づいていって震えるらん丸からセイジを引き剥がしてやった。


「あのな、らん。例えばそのバッジの力を使って昇級試験を受ける。

もちろん能力が上がってんだから試験は合格する。んでレベルが上がる。バッジの力を使ってもひとつ上のレベルの試験を受ける。やっぱり実際より能力が上がるんだから試験は合格する。

つまりそれがあればいくらでもお手軽にレベルを上げることができるって事だよ」


 悠馬の簡潔な説明を理解するためしばらく首をかしげたあと、らん丸はおもむろに手を打った。


「なるほど、そ〜ゆ〜ことか! さすがリーダぁ、そんな事まで全部お見通しだったんだ!」


 らん丸は早くも瞳を輝かせてセイジに尊敬の眼差しを向けている。その視線を受けて、セイジは顎に手を添え満足げに笑った。


「フッ。あたりまえだ!」

「す、すごい……!」

「……おまえ、そんな事かけらも思いついてなかっただろ」


 どうせセイジの頭の中にはとにかくすごいアイテムだという認識しかなかったに決まっている。その証拠に先程の説明中、らん丸の後ろで一緒に首を傾げたりなんかしていたのだ。

 それを悠馬が言ったところで、今更誰も聞いちゃくれないのだが。



◇◇◇



「それにしても……」


 朝練組が教室に戻り始めた頃、悠馬がうんざりした様子でつぶやいた。


「確かにこの辺りだよな、昨日落ちてったのって」

「だよね〜……」


 答えるらん丸の声も相当疲れている。


「リーダぁは?」

「ああ、あいつはなんか上から探し出すとか言って階段上ってった。ムリに決まってんのに」


 そう言って悠馬は三階建ての木造校舎を指差す。その瓦屋根の上にはどこから登ったのか、額に手をかざし真剣な表情で眼下を見下ろすセイジの姿があった。

 その光景を見てやはり真剣な表情でらん丸が言った。


「いや、リーダぁならやりかねない……!」

「……確かに」


 二人の視線は何か人間ではない、異質のモノを見るときのものだ。

 その話題のセイジは瓦屋根の上から身を乗り出し遠く中央広場へと視線を向けている。


「ぬぅ!?」


 第三寮は校門を出てすぐの道を横に入った所にある。すでにその寮からは住んでいる女子生徒がちらほらと校内に入っていっていたのだが……、


「あれは……!」


 それを確認した瞬間、セイジは両腕を交差させつつ校舎の屋根を蹴っていた。




◇◇◇




「あ〜、やってらんね……」


 いい加減嫌になり、悠馬は前髪を掻き撫でつつ空を見上げる。その顔が、一瞬にしてひきつった。

 一方、らん丸の方も地面から腰を上げつつ声を挙げる。


「リーダぁ、やっぱりどこにも無いみたいだよ〜」


 パタパタと膝をはたいて草を落としているらん丸は悠馬が早々と避難を開始していることに気がつかない。


「もう何人も通学始めてるし、ひとまずこの辺で――……ぅえ?」


 らん丸が見上げたとき、空から落ちてきた巨大な柱はすでに目前にまで迫っていた。



 ドカァァァッ!!



「どひぃぃぃぃぃっ!!?」


 らん丸が悲鳴を上げて間一髪で地面に突き刺さったそれを回避する。

 深く地面にえぐり込みしゅうしゅうと音を立てる巨大な柱の上から、ヤマトが改めて地面へと着地した。

 ヤマトの使う武器のひとつ、〈赤十手〉だ。赤い房飾りの付いた柄に30センチ程の棒状の刀身が付いている。その付け根からは更に10センチ程の長さの鍵棒が伸びた不思議な形状の武器だ。

 その大きさを自在に変化させることができる〈赤十手〉を一時的に巨大化させクッション代わりにしたのだ。

 何事も無かったかのように〈赤十手〉を元の大きさに戻し、ヤマトは顔を引きつらせている二人を振り返った。


「悠馬、らん丸、『赤虎』出動だ。この先の道を行く女生徒の左胸部にリメタイルを確認した!」


 悠馬とらん丸が驚きに目を見開く。


「さっっすがリーダぁ! とっても人間離れした所業!!」

「フッ。それは褒めているのか?」


 ヤマトは顎に手を添え得意そうだ。


「お前にとっては褒め言葉だろうな」


 悠馬の言った皮肉にも気がつかない。


「それじゃあ、さっそく言って返してもらいに行ぐぇ……っ!」


 意気揚々とUターンしようとしたらん丸の襟首をヤマトが容赦なしにひっつかんだ。


「何を考えておるのだたわけが。我々は〈悪者ギルティ〉だぞ、ギルティたるものどんな手段を使ってでもリメタイルを“奪い取る”! それが筋というものであろう! 素直に挨拶しに行ってどうするのだ!!」


 ネクタイを引っ張りおでこがくっつかんばかりの至近距離でらん丸を睨み付けるヤマト。

 通常よりもパワーが増している変身後のヤマトにネクタイを引っ張られているらん丸は、冗談抜きで息ができずに目を白黒させていたりする。


「そうだぞ、らん」


 そこへやはり呆れ気味に悠馬が近づいてくる。

 しかし今度はヤマトを引き剥がしてやるのではなく、そのままらん丸の肩にポン、と手を置くだけだった。


「確かに正直に名乗り出れば何の波風も障害もなく取り返すことができるが、たとえ相手が正義の味方だったとしても、自分達よりレベルが上だったとしても、先生だったとしても、学園長だったとしても、そこをあえて“奪い取る”という考えがギルティとして大事なんだぞ? なぁヤマト」


 さすがに『学園長』の所で少し顔色を変えるヤマト。はっきし言ってギルティとはいえそこまでとんでもない理論を持つ必要は無い。にもかかわらず悠馬の口元はにやにやと楽しそうだ。

何のことはない。ヤマトとらん丸のやりとりを見て楽しんでいるのだ。


「そんなことより、気を取り直して今度こそ出動だ! 行くぞ、おぬしら! 標的はリメタイルだ!!」


 ヤマトはやっとらん丸のネクタイから手を離し、拳を空へ突き上げた。

 らん丸の意識はとうとう落ちた。



◇◇◇



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