第488話
「赤き狐……。まさかシルボラのラスター家のことか?」
「そう、そのラスターよ」
シルボラ伯国はユロア大連邦に属する一国であり、その地を治めるラスター家は赤き狐の意匠を紋章として使用していた。
ラスター家は連邦外でも名が知られるほどの大貴族で、この赤き狐の一族の繁栄を支えているのは本拠地であるシルボラの街ではなく、彼らが灰の地に築いた植民市『ゴルディア』の存在であった。
ゴルディアは巨大な金鉱を有しており、そこで産出される莫大な黄金が、もとは一地方の小貴族にすぎなかったラスターを今や連邦有数の大貴族までへと押し上げていたのだ。
そしてその黄金こそが、ベルティーナの言う『赤き狐の黄金』に他ならない。
「ゴルディアの黄金を私達が手にいれる」
「黄金などに俺は興味はない」
「でしょうね、そう言うと思ったわ。けれども安心して頂戴、あなたは頭数には入っていないから。黄金はロブエル様と私の物になる」
彼女のその言葉に、マルフスは慌てて異を唱える。
「馬鹿を言うな!! 黄金はご主人様の物だ!! 炎の娘よ、マルフスはお前に言ったはずだ、お前は番人にすぎないと!! 来る時の為に、お前は我らが王に代わって黄金を守り続けるのだ!!」
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