第480話

 一方的に興奮する小男とは対照的にレグスの口調は冷ややかなものである。

「その宿命とやらから思考を切り離せと言っている。俺はお前に主従の関係を求めはしない。それどころかお前のその言動を迷惑に思っているぐらいだ。とくにそのふざけた呼び方にはな」

「呼び方? マルフスの青語は下手だったか?」

 マルフスは不安げに一行の顔色を窺った。

 彼の言語習得の未熟さというのもあるだろうが、もとから敬語の厳密さに欠ける壁の民達の社会的、言語的性質の影響が強いのだろう。その青語は王とほど敬う者に対する言葉とは思えぬほどくだけている。

 だがレグスが問題としているのはそんなことではない。

 もっと根本的な問題。

「『我らが王よ』。そんな仰々しい呼び方をする者を連れませば各所でいらぬ関心と疑いを招くだけだ」

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