第452話

「いいの?」

 女が去った後、セセリナは部屋に残る男二人に尋ねる。

 カムがその気になれば、明日にでもこの地から離れる事が出来よう。

 そうなればそれが、二人との今生の別れとなってしまうであろうことは簡単に想像がつく。

 死線を共にくぐった者との別れが、このような形になってしまうのは不本意ではないかと、精霊の少女はレグス達に問うていた。

「良いも悪いもない。一人戻るも、先へ行くも、あの女の好きにさせてやればいい」

 レグスの返答にセセリナはため息をついて無言で首を振る。

 その間ファバは難しい顔をしたまま黙り込んでいた。

「ファバ。あらためて言うまでもない事だが壁の先ではいちいちお前の面倒は見ていられない。付いて来るのは勝手だが、もしもの時に、他人の力を当てにしようなどとは思うな」

 短い付き合いの中であっても、カムはファバの事を気に掛けていた。

 もし一緒にこの先も旅する事が出来たのなら、きっとよく面倒をみてくれたに違いない。

 未熟な少年にとってこの先、彼女の助けがあるかどうかで旅の過酷さはずいぶんと違ってくる事だろう。

 だがもはや、こうなってしまっては、その助けを期待する事は出来ない。

「馬鹿にするなよ。そんぐらいわかってる」

 何度目かもわからぬレグスからの忠告に、ファバは少しばかりムキになって答えた。

「俺だって、こないだの戦いじゃ化け物共を両の手で数えきれないほどブッ殺してやったんだぜ」

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