第448話
レグスの質問にカムとファバは一瞬、互いの顔を見合わせる。
そして二人のうち先に口を開いたのは少年の方だった。
「当たり前だぜ、そんなもん。あるに決まってんじゃねぇか」
「あれだけの大戦を経験したからな。万が一にも気が変わっているとも考えた」
魔物の大軍を相手にしたあの夜の戦い、一時の戦況はまさに絶望的であった。
押し寄せる魔物の群れ、積みあがる味方の骸の山。
凄惨な光景の中で誰もが死を覚悟せねばならないほどの地獄のような戦場。
壁の先にはあれと同じモノが広がっている。もしかすれば、あれ以上の地獄やもしれない。
壁を越える事にためらいを覚え、心変わりしたって何ら不思議ではないのだ。
けれども、あれだけの経験を経てなおもファバの決意は変わらない。
「ったく、いい加減しつけぇぜ、まじで。俺は地獄の先だろうがあんたについてく。約束したろ俺に剣を教えるって、ぜってぇ守ってもらうからな」
少年の迷いない言葉を聞いてレグスは視線をカムの方へと向ける。
「私の意思も変わらない。この子がお前についていくと言うのなら、私もそうしよう」
二人の返答にレグスは部屋の外の気配を窺った。
そうして自分達以外に人気がないのをあらためて確認すると、彼は言う。
「そうか。では一応話をしておこう。明日の事や、俺の事、そして旅の目的について」
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