第443話

「それは構わないが、本当に大丈夫なのか?」

 剣の素振り程度なら多少の無理をしたところでそうそう事故も起こるまいが、慣らし程度といえど人を相手にするなら万が一の事がある。

 レグスの頼みに若干のためらいを覚えるカムだったが……。

「ああ、気遣いは無用だ」

 との言葉に、彼女はやれやれと呆れながらも応じる事にした。

「いちおう聞いておくがどの程度使える」

 いざ始める前に、レグスは相対する女に剣の腕前のほどを問う。

 彼は彼女が刀剣を使い戦う姿を出会ってから一度たりとも見た事がなかった。

 弓術の才に恵まれた者が剣才までも具えているとは限らない。

 男のそんな懸念を杞憂とばかりに、カムは涼しげに返答する。

「弓ほどではないが人並みには扱えるつもりだ。昨日まで歩くのもやっとだった人間に後れを取らない程度の自負はある」

 いくら弓の扱いが得意だといっても、携帯し動き回るには弓矢では少々難儀する事もある。実際、今朝の鷹の世話をするにあたって彼女は弓矢を部屋に置いてきていた。

 そしてそんな時は刀剣だけを腰に下げて行動するのである。

 故に、その腕前に関しても相応のモノが無ければ身を守れはしない。

 手にした剣を巧みに振って見せてからカムはレグスに問うた。

「さてと、どちらから打ち込む? やはり私が受けか?」

 剣を打ち込む側よりも受ける側の方が当然事故時には怪我をしやすい。

 体調万全な者が受ける側にまずまわるのが、この場での自然な流れではあるはずなのだが、レグスはどうやらそう思わないらしく……。

「お前からでいい。腕のほどを確認しておきたい」

 カムに打ち込んでくるよう要求した。

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