第442話『レグスvsカム』
朝霧が晴れ始めたばかりの城庭の一角で男は黒き剣を振るい、まだ冷たさの残る春の風を切っていた。
その様子を眺めながら鷹の世話をする女が言う。
「よくそれだけ動けるものだな」
呆れまじりの声色で問うカムに剣を振るう男レグスは息一つ乱さず答えた。
「いや、全然だ。こんな遅い振りでは蠅も斬れん」
「熱心なのはいいが、ほどほどにしておけよ。昨日までほとんど寝たきりになっていた人間が無理をすれば祟るぞ」
日はまだレグスが目覚めてからわずか四日しか経っていない。
常人ならば満足に動く事すらかなわず、剣を振るうなどもってのほか。
いくら壁の民達の協力があったからといっても、その回復力は驚異的としか言い様が無かった。
「鈍った体を慣らすのに必要な負荷だ。この程度、無理のうちには入らん」
仲間の忠告にも顔色一つ変えずにそう答えるレグス。
数々の無謀と無茶を繰り返してきた男にとってそれは本心から出た言葉であった。
そうしてしばらく一人剣を振るっていたレグスだったが、鷹の世話を一通り終えた女の手が空いたのを見て、彼は言う。
「カム、腰に下げたお前のその刀剣が飾りではないのなら、少しばかり相手を頼めるか?」
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