第440話

「古き精霊よ、これは大切な話だ」

 我慢できず二人の会話に割って入ってくるマルフス。

 そんな小男をセセリナは強い口調で注意する。

「黙りなさい。私は彼に言っているのよ。あなたには聞いていないわ」

 彼女が把握する人となりから考えれば、ガァガは無粋に物事を進めるような真似を良しとする性格にはない。

 己の信ずる宿命との邂逅に気持ちがはやるマルフスと違い、この老兵ならば事の重大さを認識していながらも、自分の思いを汲んでくれるのではと古き精霊の少女は期待していた。

「たしかに……。我らもすこしばかり焦りすぎていたようだ。礼を欠くような振る舞いをしてすまなかった」

 そう言って詫びながらガァガは言葉を続ける。

「話は日をあらためてという事にしよう。先の戦いの功労者に我らも出来るだけの事はさせてもらうつもりだ。何かあれば気兼ねなく申してくれ」

 呆気なく話を切り上げ立ち去ろうとするその対応に、もう一方は納得いかず声を荒げる。

「何を悠長な事を!! 古き精霊よ!! お前とて黒き預言を知らぬはずはあるまい!! 彼だけが……」

「よせマルフス!! いいかげんにしろ!! 話はまた次の機会と言っておろうが!!」

 激する大男に圧されマルフスは口をつぐむしかなかった。

「失礼した。気を悪くしないでくれ」

 そうしてその言葉を残し、ガァガは傍らの小男と共にレグス達の部屋を後にする。

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