第404話

 術を使い、イファートの熱波に耐える内にセセリナの霊力はどんどんと消耗されていく。

 この戦いに入る前から彼女はレグスの為に力を割き、幾度となく術を使い、城の魔法陣を復活させるのにも霊力を消費している。

 そのうえでの古き神との戦闘。

 限界は近付いていた。

――まずいわね……。

 セセリナ自身、それが近い事は感じていた。

 それでも彼女は残り少ない霊力を上手く使いながら、出来るだけ戦いを引き延ばそうとする。

 無理を重ね、次第に鈍り出す精霊の動き。

 それを炎の巨神は見逃しはしない。

 セセリナの避けきれない軌道でイファートの巨拳が飛んでくる。

 一瞬意識が飛ぶほどの痛撃だった。

 彼女の体が霊体ではなく、人の肉体であったなら間違いなくバラバラに砕け散っていた事だろう。

 それほどの一撃。

「痛ぁっ……。死ぬかと思ったわ……」

 手痛い一撃を食らって、勢い良く弾き飛ばされたセセリナ。命に別状はないものの、疲弊の色は明らかだった。

 対する炎の巨神はうるさい蠅を追い払い満足したかのように、もう古き精霊に対する興味を失ったらしく、再び城へと向かい歩み始める。

 セセリナとしてもそれを黙って見ているわけにはいかないのだが、彼女の継戦能力はほとんど残されていない。

――退き際ね……。

 内心そのような事をセセリナが考えていると。

「セセリナ、大丈夫か」

 覚えのある声がした。

 声のする方へと目を向ければ、そこにはレグスが立っていた。

 どうやらイファートの一撃で弾き飛ばされた先が、偶然彼がいる近くだったらしい。

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