第400話

「ファバ!! カム!!」

 イファートの足止めに向かう前に彼女は二人のもとへと寄り、声をかけた。

 古き神の召喚の影響によって術の効果が切れており、今はもう風は言葉を運んでくれない。だから、危険な役目を負うからには万が一の時に備え、直接彼らに伝えておかねばならない事があった。

「あんた達はいよいよとなったらここから逃げなさい!!」

「俺達はって、お前はどうすんだよ……」

「私は今からあいつの足止めに向かうわ。心中する気はさらさらないけど、相手が相手だから何が起こるかわからない。だから、いざとなったら二人だけでも逃げてちょうだい」

「逃げろたって何処へ!? それにレグスはどうすんだ、生きてんだろ!?」

 一連の騒ぎの中、セセリナはレグスの無事を念話を通して確認している。その事は少年も精霊から聞かされていた。

「ええ、心配ないわ。あの子にも私から伝えておくから。北と南から壁の民達の救援の軍が向かってきているはず、まずは彼らに助けてもらいなさい。その後は……、ラザリックで合流しましょう」

 エントニアのラザリックは騒動の当初、レグスがファバ達に命じた避難先でもある。

 少々強引にでも話を進めるセセリナに、ファバは困惑の色を浮かべた。

「けど……」

「『けど』はなしよ。とにかく、何があろうとカムの言う事に従って動きなさい。彼女なら上手くやってくれるわ。いいわね」

「ああ……」

「カムもこの子の事頼んだわよ」

 セセリナの言葉にカムは頷き、危険な役割を果たそうとする彼女の身を案じた。

「わかった。セセリナ、気をつけてな」

 それは少年も同じ。

「セセリナ!! 無茶すんなよ!!」

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