第401話
仲間の二人に見送られ、セセリナは古き神イファートのもとへと向かう。
その燃ゆる神に近付けば近付くほどに、空気は熱を帯びていった。
途中、事の連絡の為のレグスとの念話を挟みながら彼女は飛び進む。
そして霊体で無ければ、そのまま燃え尽きかねないほどの距離まで近付くと、宙を舞う古き精霊は念話による説得を試みる。
――炎の大神ファラの子、大地の太陽の眷属イファートよ。お願い、止まってちょうだい。私達はあなたの敵ではないわ、戦うつもりなんてないの。お前の女王も無事よ。光焔の女王は私達が保護している。危害を加えなどしないわ。
昂り我を忘れる炎の神は聞く心を持たない。
傍を舞う精霊の事など気にもせず、ひたすら城へと向かって歩を進めるイファート。
説得が通じぬのならばやむを得ない、こうなってしまっては取れる選択肢は一つ。
セセリナは決断する。
――聞く耳ならぬ、聞く心持たずってわけね。いいわ、最初から覚悟のうえよ、力ずくでいかせてもらうわ。
青き精霊の少女は詠唱する。
古き精霊の言葉を紡ぎ、霊力を高めて、風を呼ぶ。
それもとてつもなき強き風、大木を薙ぐほどの突風を。
その風はイファートに向かって吹き付け、炎の巨神はまるで誰かに思いっ切り殴られたかのように体勢を崩す。
よろける。我関せずと歩を進めていた炎の巨躯がセセリナの起こした風に打たれ、よろめいたのだ。
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