第398話

 神の咆哮とセセリナの話に一同が動揺する中、ガドーが慌てた口調で言う。

「おいおい、どうにかしねぇと!!」

「だからそのどうにか出来るのが、この娘だって言ってるでしょ。いい? 少しでも早く彼女の目が覚めるよう、何でもいいから皆で呼びかけてやってちょうだい」

 魔術師と違いその手の知識に疎いガドーには、この切迫した状況下でずいぶんと間抜けにも聞こえる指示だった。

「声をかけろって、そんなんでどうにかなんのか? 他にもっと何か特別な方法でとかは!?」

 戸惑う青目人に精霊は言う。

「単純だけど結局、その手の方法が一番なのよ。底に沈んだ意識へと届き易いのは当人にとって親しい者達の声。それに、このお嬢さんはずいぶんとご執心な殿方がいらっしゃるみたいだし、多少なりとは効果があるでしょ」

 彼女の言葉に一同の視線がロブエルに集まる。

「よ、呼びかけてやるだけでいいのか?」

「そうよ。とにかくやれる事はやってちょうだい。彼女の目が覚めなきゃ下手すりゃこのまま全滅よ」

 セセリナがローガ開拓団の面々にそう告げた時、離れた位置でカムと共に城外の様子を見守っていたファバが大声で叫び、古き神イファートの異変を知らせる。

「おい!! やべぇぞ!! あいつがこっちに向かってくる!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る