第373話

「ゾブルの奴らをですか?」

「そうだ。一癖も二癖もある連中だが戦争には役立つ。特にロウガルの連中ならば、ボルドフの軍勢にも引けは取るまい」

 灰の地には魔物だけでなく多くの蛮人達が暮らしており、ゾブル高原に住まう狼の亜人『ロウガル』もその一つであった。

 高原を駆ける狼を自称する彼らは武勇に優れ、味方に付けられれば大きな戦力になる事は間違いなかった。

 しかし事がそう簡単に運ぶとは、シュドゥラの部下達には思えない。

「ですが、奴らはそれこそ黒鉄山のオーク共とは不倶戴天の敵同士。今のロウガルの大族長ファングンは父親と二人の兄をボルドフによって殺されていますし、とてもこの連合に加わるとは思えません」

「誰が連合に加えると言った?」

 シュドゥラが意味深に笑みを浮かべて言う。

「物は考えようだ。たしかにこの戦いで我らは大きな痛手を負ったが、それは魔物連中とて同じ。敵の救援軍との戦いの後となれば、いったいどれほどの戦力が残る。丁度いい手切りの機会だとは思わんか?」

「それは……」

「所詮は汚れた魔の血を引く者共よ。いずれは邪魔になる存在だ、掃除の時間が少しばかり予定より早まっただけの事」

「上手くいくでしょうか?」

「いくさ。もとから争う事しか能のない連中だ。まとめ役である我らが抜ければ連合は瓦解する。そうなればいくらボルドフとて敵ではない」

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