第372話
「報告!! ゴゾッグのトロル隊が城門を突破。アドゥガ率いるオーク隊が西の城壁を完全に占拠。東と北の城壁も間もなく落ちるとの事。今度ばかりは敵に反攻する力は残されていないかと……」
部下のダークエルフから城内突入の報を受け、魔軍を指揮する枯れ森のエルフの長は複雑な表情を浮かべた。
報の信憑性を疑っているわけではない。
むしろ彼自身この戦いでの勝利を確信してすらいた。
それでもシュドゥラの口から出る言葉は、苦々しさが込められたものだった。
「ようやくか……。無駄に手こずらせおって」
彼が戦況を素直に喜べない理由は単純、受けた損害があまりに大きかったからだ。
その懸念を抱くのは部下達も同じらしく、不安げな面持ちで彼らは長である男に尋ねる。
「シュドゥラ様、大丈夫でしょうか。煉撰隊やノフラのリッチすらも討たれた今、もしボルドフ達が反乱を起こせば、それを抑えるだけの戦力が我らにあるかどうか……」
ボルドフはエルフ嫌いの魔物達の中でも一際シュドゥラ達に反抗的なオークであった。
彼はカガンの黒鉄山の王として多くの兵士を従えているだけでなく非常に野心的で、隙あらば連合軍の主導権をエルフ達から簒奪しようと目論んでいた。
シュドゥラもその事は重々承知している。
だからこそ煉撰隊やノフラの禁術をもしもの時の切り札とするはずだったのだが、その計画は邪剣使いの出現と壁の民の奮闘により四散した。
だが、それに代わる対応策を枯れ森のエルフの長たる男は既に考えついている。
「わかっている。心配するな。この戦いが終わればすぐにでも使いを遣ってゾブル高原の蛮人共を動かす」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます