第371話

 二人の念話からほどなくして、城を覆っていた結界に異変が生じる。

 穢れを払う力が急速に弱まり、やがてその力は完全に消失。

 城に立て籠もる者達は聖なる力の加護を失ってしまう。

 それを好機とばかりに魔物共は攻勢を強めた。

 結界からの束縛を受けぬ魔物達は、それまでの鬱憤を晴らすかのように暴れに暴れた。

 これまでの度重なる攻勢と悪霊の急襲により、壁の民の戦力は既に激減しており、結界の力があってこそなんとか防衛線を保てていた彼らに、この攻勢を防ぎきるだけの力は残されていなかった。

 城内のいたるところで怒号にも近い大男達の叫び声があがる。

「南東の三番側防塔にリザードマン達が雪崩れ込んだぞ!!」

「東壁の人手が足らない!! 援軍を!!」

「西の壁上がオーク共に占拠されているぞ!!」

 瞬く間に悪化する戦況に、打つ手などありはしなかった。

 四方の壁上にオーク共が押し寄せ、側防塔をハーピーとリザードマン達が次々と占拠。

 城門が破られ、そこからトロル達が雪崩れ込む。

 壁の民達も数少ない戦力で必死の抵抗をするものの、それは戦局を変えるようなものにはなりえない。

 ここにきての数に物を言わせた魔物達の攻勢に、壁の守護者達は次々と討ち取られていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る