第350話

「最低でもどれぐらい持たせられる?」

 レグスの問いに、セセリナは険しい口調で言う。

「わからない。魔法陣はかなり不安定な中、なんとか動いてる状態だから……、正直いつ結界が消えてもおかしくないわ。こうしてお喋りしている間にすらね」

「つまりまったく猶予無しか」

「ええ」

 どうやら一息つく間すらないらしい。

 もしこのまま結界が消えるような事があれば、城外に留まる悪霊共が再び雪崩れ込み、戦況は瞬く間に悪化するだろう。

 猶予無き厳しい状況にレグスは即断する。

「わかった。だったらすべき事は一つだ」

「どうするつもり?」

「リッチを狩る」

 悪霊を操る不浄の王を倒せば、統制を失った亡者の群れは霧散するか、近場の魔物共に襲いかかるかするだろう。

 もし本当にリッチを倒す事が出来るなら、現状においてこれほど効果的な手はない。

 問題はそれが出来るかだった。

「狩るって言ったって、城外にはまだまだオークやトロル達がごまんといるのよ!?」

 問いただすセセリナにレグスは即答する。

「ガァガに言って生き残ってる重兵団を動かし血路を開く。獅子馬に跨る精鋭隊なら、その程度の役目は果たせるはずだ」

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