第339話

「そうか。やはり実力行使でいくしかないか」

 他に方法がないのなら、戦い続けるまでだ。そう覚悟を決めるレグス。

「来るなら来やがれってんだ!! オークも悪霊も今さら同じようなもんだぜ!!」

 強がり交じりではあるがファバも戦意を喪失していない。

 張り詰めた重苦しい空気が場を覆っていた。

 そんな中でセセリナは迫る亡霊の群れを見つめながら、不思議がるような口調で言う。

「だけど、あんな数を呼び出すだなんて無茶苦茶よ。魂無き悪霊に言葉は通じない、奴らは生ける者を見境なく襲うわ。あれじゃあ自分達だってただじゃ済まないでしょうに……。自棄を起こしたのかしら」

 上手くいかない城攻めに、味方もろとも葬るつもりなのだろうか……。

 皇帝アングスタの眷属である悪霊共を呼び出すなど、それほどの暴挙であると古き精霊には思えたのだ。

 しかし、そんな彼女に対してカムが悪霊の異変を見て知らせる。

「どうやらそうでもないらしい……」

 カムの言葉に闇夜に浮かぶ者達をよくよく見れば、確かにいくらかの悪霊達は城外の魔物に襲い掛かっているものの、全体から見れば極々小数に過ぎない。

 ほとんどの悪霊達は近くの魔物達には目もくれず、この城へと真っ直ぐ向かってきているではないか。

 レグスが言う。

「なぜ魔物共を無視する」

「おかしい……、そんな事あるわけ……、まさか!!」

 数多の知識を有する古き精霊は、現状の答えとなる存在に思い当たる。

「どうした?」

「リッチよ!! あの不浄の王が悪霊共を操っているのよ!!」

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